シニカオオズアリ
世界最大のオオズアリとして知られる種。
生息地は中国の湖南省、広東省、広西チワン族自治区。
本種の魅力の一つは前述の大きさにある。
マイナーワーカーは日本のオオズアリ(Pheidole noda)と比べて少し大きい4〜5mm程度である(それでも十分大きい)が、メジャーワーカーはほぼ2倍の8〜9mm、そして女王に至っては約1.5倍の12mmという巨大さである。同じオオズアリの仲間とは思えないこの女王こそが世界最大の由来である。
女王だけでいえば他の中型種の女王を上回り、オオアリ属のメジャーワーカーにさえ匹敵する大きさである。実際に見ると頭を含めた体全体の横幅がかなりあるため迫力はそれらを軽く超えてしまうだろう。
体色は女王が黒がちの茶色。メジャーワーカーは頭が焦げ茶、腹部は少し薄い褐色である。マイナーワーカーはさらに体色の薄い赤褐色を示す。
またメジャーワーカーはマイナーワーカーと全く違う形をしており、名前の通り頭でっかちだ。ハート型の大きな頭でとてもかわいらしい。
野生においては森林等に生息しており高湿度環境を好むため、飼育では石膏巣を使うのがいいだろう。
かなり丈夫であるため余程乾燥させたり水分を切らしたりしなければ巣についてはそこまで神経質になる必要はないが、後述する性質により試験管飼育は少し用意が大変になるのでオススメしない。
餌は肉食性が強いため昆虫類を中心にあげると良い、好き嫌いもほとんどなく、アリによくある餌の飽きもこの種に関してはかなり緩い。同じ餌ばかりでも急に違う餌になってもどんなものでも選り好みせず食い尽くしてしまう、有り体に言えば「悪食」な面があるということだ。
地味な注意点だがシロアリを与える際は必ずシロアリだけを入れよう。筆者は(数もいて体も小さいからバラバラ与えるより朽木ごと入れて自分達で狩りをしてもらうのが楽だな)と思ってやったことがあるが、彼女らは何故か朽木まで粉々にしないと気が済まないらしい。粉末になるまでワーカーが離れないから取り除けないし粉末になると結局それらはゴミとして餌場にうずたかく積まれることになる。
蜜も好物のためよく集まりはするが与えなくても問題は起きないようだ。筆者も執筆段階で数ヶ月は与えていないが問題なく"殖え"続けている。そう、それこそがこの種の2つ目の魅力であり、人によっては注意すべき欠点になりかねない。
この種の2つ目の特徴はその繁殖力だ。
"爆殖"という言葉がこれほど似合うアリもそういないのではないだろうか。
誇張ではなく本当に給餌すればするほど殖える、ほぼ際限なく殖えていく。筆者は購入当初一辺が9cmほどの正方形の石膏巣にて飼育していたが、100匹程度のコロニーが約2ヶ月で天井までワーカーが這い回るほどにまで拡大した。
現在はさらに大きな石膏巣を追加して飼育しているが1ヶ月経過時点で既に餌場に常にワーカーが溢れるほどだ、正直世話がしにくくて仕方ないし餌場はろくに掃除できず汚れる一方だ。
この特性は飼育する上でとても楽しいし、「コロニーが繁栄する」というアリ飼育において最も飼育者が喜びを感じるであろう要素をハッキリと体感できる素晴らしい特性である、その一方でその繁殖力に対処できるだけの準備が必要である。と言っても、追加の巣を置けるスペースとそれをすぐに用意できる金銭、あとはコロニー規模に応じた量の餌があれば飼育自体は容易なのだが。
何故こんなにも殖えるかについてだが、恐らくこの種は多産多死を生存戦略として採用している、体の小さなマイナーは本当に華奢で、しかしそれでいて何にも怯えることなく自分より何倍も大きな相手にも立ち向かっていく。
活き餌を与えるとよく分かるが、数に任せてどれだけ振り払われようと次々に巣から応援がやってきて餌場と獲物がマイナーに埋め尽くされる様子は戦慄すら覚える、そして彼女らのうちの幾らかが戦死してしまう。もちろん弱らせた獲物を入れるがそれでも簡単に逝ってしまうのだ、それほどに儚い命である。だが殖える数がその戦死者の数を圧倒的に上回るため彼女らはどんどん繁栄していく。
飼育下でわざわざ生体を危険に晒すなんてエゴだと言う人もいるかもしれないが、できるだけリスクを減らした上で狩りの様子を観察するのもアリ飼育の醍醐味だと思うし、この種においてはまさに集団の狩りを観察するのにうってつけである。
まとめると、
・良いところ
大きくて観察しやすい(オオズアリにしては)
メジャーが独特な風貌でかわいい
丈夫
よく食べ、よく殖える
・大変なところ
殖えすぎる
それに伴って増設巣の費用と置き場がかさむ
ということである。
独特なフォルムのアリが観察したかったり急速なコロニー繁栄を楽しみたかったり活発な狩りを観察したりしたい人にとっては最高のアリになることを保証する。
コメント
うたかたアリさん: 2021-12-30 05:29:23
小型化した代わりに丈夫になったヨコヅナアリみたいな印象ですね。
私の方でも先日購入したのでこの記事を参考に飼育してみたいです
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うたかたアリさんへ かけこさん: 2021-12-30 06:07:45
ヨコヅナ飼育経験はありませんがたしかにそんな感じなのかもしれませんね!
どれほどお力になれるか分かりませんが、素晴らしいコロニーが築けるよう祈っております
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