岩手にある古い旅館

  
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 妹が青森県の男性と結婚することになり、結婚式は男性の地元である弘前市で行うことになりました。色々と運ぶ荷物があったので、私と父は東京から車で行くことになりました。父と2人で旅行したことがなかったので、少し余裕を持って出発し、途中で観光しながらドライブとなりました。

 岩手県の中尊寺を見学した日の夜のことです。その夜は中尊寺に近い古い旅館に宿泊しました。次の日は弘前に到着なので、食事をした後で父とお酒を飲みました。2人ともほろ酔い加減で気持ちよく床に着いたのです。観光シーズンではなかったので、20畳ぐらいの広めの部屋でした。布団を2つ並べて眠りにつきました。

 夜中の2時頃に突然、父がうめき声を上げて苦しみ始めたのです。ビックリして目が覚めた私は、父が発作でも起こしたのかと思って揺り起こしました。胸を掻きむしりながらうめいていた父は、私の声で目を開け、恐怖の顔で飛び起きました。どうしたの、どこか具合悪いの、と聞いても青ざめた顔で天井をじっと見上げたままです。不安になって部屋を出て、旅館の人を呼びに行きました。救急車を呼んでもらおうと思ったのです。

 旅館のおばさんに事情を話したら、真っ青な顔になって部屋へ駆けつけてくれました。父は天井を睨みつけたまま動きません。おばさんは父を見ると小さく悲鳴を上げて、ドタドタと帳場の方へ戻っていきました。私は何が起こったのかわからなくて、父の背中をさすってやりました。背中は汗でグッショリ濡れていました。おばさんは旅館のご主人を連れて戻ってきました。ご主人も真っ青な顔をしていましたが、手にはお祓いの道具のような物を持っていて、いきなり父に向かって地元の方言で何やら念仏を唱えながらお祓いを始めたのです。

 3分ぐらい続いた時、父の口からホウーッという溜め息がもれて、金縛りが解けました。ご主人は安心したような顔になって、父の肩や背中をさすってくれました。父の話によると、夜中に気味の悪い夢を見て目が覚めたというのです。すると部屋の中に顔が血まみれの男が立っていたというのです。その男は鎧をつけた武士だったそうです。血まみれの武士はわけのわからない叫び声を上げて、父に刀を振り下ろしました。その瞬間、父は叫び声を上げ、私も目が覚めたんです。その時、父には天井に張りついている武士の亡霊が見えていたそうです。私にはまったく見えませんでした。旅館のご主人の話によると、その旅館の建っている辺りは昔の戦いの跡地だったそうで、泊まったお客によっては亡霊が取り憑くことがあるということでした。父は武士に刀で斬られた首筋がその後もしばらく痛いと言ってました。東北にはそのような場所が今でもあるそうです。

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