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チョロ寺 さん

  
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私の心の中にあるニューヨーク製菓店は商店街でいつも母がビールを買うと私にくじ付きの飴玉をくれる酒屋ちゃんであり、松葉という名前の細かいお煎餅を売ってるお煎餅屋さんであり、駅前にあって夜逃げして今はカルディになってしまった魚屋さんであり、はじめて常連となった珈琲屋、そして毎晩のように親のおまけで通っていた焼き鳥屋さんである。


街の移り変わりはともすると静かに、ひっそりとなされていくから、気がついた時にはほとんどの店がなくなっていて、ひとたびなくなってしまうと元に何があったかはわからなくなってしまう。そして気づけば私も10歳から38歳になっていて、傍には8歳の子どもがいたりする。


ニューヨーク製菓店が時代とともに、静かに街の移り変わりの波に呑まれていくとき、特になにもできなかったような主人公の気持ちがわかるような気がする。

街の移り変わりは誰にも止められず、ただ店の中のものが減り、ある日シャッターやドアに貼り紙が貼られ、次に前を通った時には更地になっているか、そのままの門構えで全く違う店になっていたりする。ニューヨーク製菓店が24時間営業のクッパ屋さんになっていたように。


ニューヨーク製菓店は私のくじ付きの飴玉、お煎餅の松葉、元気に呼び込みをしていた魚屋のお兄さん、妻と別れたあと離れて暮らす娘が結婚していたことをあとから知って、酔って泣いていた焼き鳥屋のマスター、そう言った小さな、しかし私の中に灯る大切な大切な灯りを思い出させてくれた。


確かに生きていて、同じ時代を、同じ天気を、同じ時間を私たち少しずつ共有したのだ。

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