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武塙麻衣子 さん

  
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キム・ヨンス著「ニューヨーク製菓店」は、この世界で生きている誰もが胸の中にひとつもしくはふたつ持っている優しい灯りの物語だった。読み終えてまず一番に考えたのは、私にとってのニューヨーク製菓店はどこだろうかということだった。著者は子どもの頃に当たり前のように彼の目の前にあった場所のことを繰り返し思い出す。その場所でなら今はもう食べることの出来ないパン(あんパンやクリームパン、コンボパンや餡餅にドーナツと牛乳食パンというのが、製菓店の基本的ないつまでも飽きないパンなのだそうだ)を何度でも両手に抱えることが出来る。なんて温かくて寂しい記憶なのだろう。「記憶」が心の拠り所となるというのは少し感傷的にも聞こえるけれど、キム・ヨンスが描く今はもうなくなってしまった街は、嘆くのではなく慈しむことの大切さを思い出させてくれた。この世のどこにももう存在しない灯りは他でもない自分の中に火を灯し続けている。私も、私のその火を絶やさずにいたいと思う。

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