本サイトは、SHARE info(シェアインフォ)で作成された投稿型サイトです。
今すぐ、無料で、簡単に「投稿型サイト」が作成できます。

田野倉 佐和子 さん

  
通報 ウォッチ 0

単なる幼い頃の思い出話のような小説だと思って読み始めました。けれどもそれは大きな間違いでした。

「どうせ人生とはそういうものではないか」という言葉が形を変えながら、何回も登場します。元々は、父親が著者である息子宛に書いた手紙の一節です。たいていのものには死がある。人生とはそういうものだ。だから「所信の限り、希望をもって進んでいけ」というのがその内容でした。人生には必ず「死」という段階が訪れます。ニューヨーク製菓店にも「死」が訪れました。けれども、それで終わりではない、ということを著者は知るのです。ニューヨーク製菓店は著者の中に、「もうこの世のどこにも見つけることのできない灯り」となって灯り続けているのでしょう。


「やさしいのに難しい」とキム・ヨンス作品について語られた言葉を聞いたことがあります。この『ニューヨーク製菓店』も読んでいて難しい言葉はありません。すらすら読めます。それなのに、読み終わった後に「面白かった!」という単純な感情だけが湧き上がってスッキリしてこの小説を忘れてしまうのではなく、様々な感情が折り重なって深く心に沈んで行く感覚を味わいました。それが「やさしいのに難しい」ということなのかもしれません。


私が一番好きな箇所は、灯りについての描写です。著者の心を豊かにしたという灯りの数々。読んでいるだけで、私の中にある灯りの思い出がよみがえりそうでした。この世に存在しない灯りの数々さえも。そして私もそれがあれば生きていけそうな気がしています。

関連する投稿

  • 投稿 - 2021/11/28
    aks さん
    0

    ニューヨーク製菓店、という店名がまた素敵で、どういった理由で名付けたのか、まず最初...

  • 投稿 - 2021/11/28
    たけ さん
    0

    日々を過ごすなかで、ふと思い出す風景や誰かの言葉があります。それはその人にとって大...

  • 投稿 - 2021/11/28
    山口 雅 さん
    0

    韓国文学を読むのは初めてだった。読んでみたいと思ってはいたものの、実際に本を買って...