本サイトは、SHARE info(シェアインフォ)で作成された投稿型サイトです。
今すぐ、無料で、簡単に「投稿型サイト」が作成できます。

神山 マドカ さん

投稿:伊藤伊藤  
通報 ウォッチ 0

原稿用紙から聞こえる鉛筆の走る音。


キム ヨンスが「ただ、そうしなければならないように思えた」と振り返るように、この「ニューヨーク製菓店」はノスタルジーを感じさせる鉛筆で書かれるからこそ、本になったとしても伝えたい言葉は変わらない。


キム ヨンスが奏でる鉛筆の音がリズミカルに響き、文字は若葉や枯葉になって風とともに宙を舞い、少し乾いた空気の中でパンの甘い香りも混ざり合う。言葉だけで、その場所に在った温かさを感じさせる。心の中に残る抱きしめたくなるような思いから、ずっと目の前にあった風景まで、誰かの大切なモノがいっぱい詰まっているキャンディーボックスを眺めているような時間だった。


そして、それは私自分自身にとっても必要な時間であったことは伝えたい。


公園で夕焼けを眺めながら、一人でブランコを漕いでいたら母の「帰る時間だよー」と手を繋いで家に帰ったこと。


寒い日にお風呂に入って湯気でぼんやりとする電球の光りを見ていたら、母から「のぼせるから早くでなさいねー」とよく言われたこと。


そんなこともあったことを思い出した。

私はその好きだった思い出も、いつから記憶の奥にしまったのだろう。


30代半ばになった私は、自分自身の母を考えることが以前より多くなった。身近な人がある日、存在ごと消えてしまうとはどんなふうになるのだろう。もし、母にその時がきたら私はちゃんと受け止められるのかな。想像して考えて、頭でわかっていても、大切な存在が消えてしまう怖さがないだなんて言えない。そして、自分の中にある母との思い出がぐるぐると頭の中で円を描く。


そんな時に、「ニューヨーク製菓店」に出会えたことが涙が出るくらいに嬉しく思う。


忙しい日常から少しだけ離れて、不器用だけど誰かを思う気持ちに素直になること。心にある大切なモノを改めて考える時間を読書は与えてくれる。


冬も深まる季節、温かいコーヒーと一緒に読みたくなる一冊になるだろう。

関連する投稿

  • 投稿 - 2021/11/28
    maica さん
    0

    私はまだ故郷を離れたことがない大学生ですが、急に自分の故郷を恋しく思いました。きっ...

  • 投稿 - 2021/11/28
    ぱんだーまん さん
    0

    この作品を季節に例えるなら春だ。クリスマスケーキが出てくるし、かき氷も登場するのに...

  • 投稿 - 2021/11/28
    はせがわさい さん
    0

    最近ふとしたことがきっかけで韓国文学の世界に足を踏み入れました。ただただ偶然ですが...