akk さん
韓国ドラマ『ボーイフレンド』の作中にあった『世界の果て、彼女』を読んで、『世界の果て、彼女』は、大好きな一冊となった。
単純で影響を受けやすい私は、日常でもメタセコイヤの木を見かけると根元に埋まっているであろう手紙を想像し、大きな三角の姿に世界の果てという言葉が思い浮かぶようになってしまった。
今回、その著書キム・ヨンスさんの『ニューヨーク製菓店』を知り、タイトルのイメージから、あぁ、やはりあんなに心に残る作品の著者は、私には想像でしかない街、ニューヨークのおしゃれな製菓店で育ったんだなぁと。
おしゃれでふわふわと甘そうな製菓店を知るべく読み始めたら……
昔、どこの町にもあったようなパン屋さん『ニューヨーク製菓店』の末っ子の思い出の物語でした。
そしてその物語は大きな喪失と痛みを抱える大人にとっては、救われたような気持ちになると思う。
思い出が心の支えになるという事実を改めて知ることによって。
家族の幸せな『灯り』とあたたかな母の笑顔がたくさんの『ニューヨーク製菓店』も三人兄弟が育つまでの費用と母の闘病費用をまかなって役目を終えた。
それは、きっと誰にでもある思い出と重なる部分がたくさんあると思う。
『ニューヨーク製菓店』を知らないのに、私も懐かしい気持ちになり、子どもの頃に感じていたあたたかな存在を思い出すきっかけにもなった。
守られていたし、幸せだったなぁと。
私は、子どもの頃の家族から巣立って、既に二十年が過ぎた。
家族は、もう若者ではない夫と、小さくはないけど事情により少しだけ立ち止まっている子どもと高齢の義理の父。
遠方のひとりになった父とそれを支えるひとりの兄。
たくさんの日常の追われていて、日々の苦しいことだけを思い、先の見えないことに恐怖を感じることもある。
でも、『ニューヨーク製菓店』の物語に出会えたことで、当たり前となっていた自分の家族の存在が、私の大切な小さな灯りなんだと改めて思えた。