mame さん
素朴なパンが並ぶニューヨーク製菓店と、そこに息づく家族の生活の風景が、ページをめくるごとに浮かんできました。
食べ飽きることのないあんぱんは、日常そのものだけれど、その日常も、少しずつ変化したり、突然壊されたり、思いもやらない方へ流されたり。ときには、「どうせ人生とはそういうものだから。」と口にしたくなることもある。
それでも、自分にとっての灯りに気づけば、また歩きはじめられるんですね。私も、「人生とはそういうものではないか。」と、息子を勇気づけた父親のように、誰かに語りかけられる大人になりたいです。
鉛筆で書かずにいられない小説とは、普段は人に見せることがない日記にも似た存在でしょうか。その筆跡に、書く人だけの思いや感情が表れているのだろうと思います。ご自身のなかにある、ささやかで確かな灯りを見せてくださったキム・ヨンスさんに感謝したいです。