本サイトは、SHARE info(シェアインフォ)で作成された投稿型サイトです。
今すぐ、無料で、簡単に「投稿型サイト」が作成できます。

shirotora さん

  
通報 ウォッチ 0

世の中は移り変わり、永遠に形を変えないものなど何一つない。しかし、人は誰でも、自分の心の中だけに存在する「ニューヨーク製菓店」を持っているのかも知れない。


キム・ヨンス作家が2002年、32歳の時に書いた自伝的短編『ニューヨーク製菓店』は、慶尚北道金泉という、私が一度も訪れたことのない韓国の地方都市が舞台だ。隣の国の見知らぬ街の話なのに、最後の一行を読み終えて、私の脳裏に浮かんだのは、大学に入学するまで両親と暮らしていた自分の故郷の風景だった。

「夕飯だよ、帰っておいで」と呼ばれるまで、夢中で遊んでいた路地や原っぱ、読みかえすたびに心が締め付けられた『すずの兵隊』の絵本、今は写真でしか見ることの出来ない母の笑顔、故郷で一人暮らしをしている年老いた父の後ろ姿。

あくせくした日常の中では、心の片隅にしまい込んで埃をかぶっているけれど、たまに取り出した時、変わらずそこにあればホッとする、そんな「灯り」


この小説は、韓国の現代史を背景に成長し、今はこの世から消えてしまった「ニューヨーク製菓店」という作家の「灯り」を通じて、読者の「灯り」を召喚する物語でもある。


自分という存在は、自分が消え去ったあとも、もしかして誰かの「灯り」になれるのかも知れない、作家が与えてくれたそんな希望のためだろうか、読後感は、オレンジ色の街灯にように優しい。

関連する投稿

  • 投稿 - 2021/11/28
    yspeeeee さん
    0

    その店を想像する時、暖かくて優しい空気に包まれた場所を想像する。ニューヨーク製菓店...

  • 投稿 - 2021/11/28
    岡本 景子 さん
    0

    読み進めるうちに、自分が古い記憶の中へと戻って行くような、何とも言えない懐かしさが...

  • 投稿 - 2021/11/27
    maccori さん
    0

    著者の自叙伝とは知らずに、「ニューヨーク製菓店」というタイトルに惹かれて拝読しまし...