y(美玉書店)さん
『ニューヨーク製菓店』を読んで、まるで友人や先輩から直接思い出話を聞いているかのような気持ちになった。
自分の思い出と重なることは無いのだけど、自分の親しい人から話を聞いているような、そんな暖かさがあった。
ただ、実際に話を聞くのと決定的に異なるのは、この文章がきちんと整理されていること。
同封いただいた冊子のインタビューから、氏のストイックさと小説の力を信じる強さを感じた。それを踏まえもう一度本作に目を通して、この短い作品の完成度の高さに気づくことができた。
これは他の作品も読まないと!
話は戻るが、完成度の高さに気づいたからといって、はじめに感じた暖かさがなくなったりはしない。
友人による”生きていくのに必要な少しの灯り”についての話を、私も居酒屋で姿勢を崩しながら聞いて、「あるよね~」と軽い気持ちで頷く。そして、ひとりで入った定食屋(じゃなくても良いけど)でこの話を思い出す。
思い出すときっていうのは、きっと強く生きていきたいと願うときだろう。そんな気がする。