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止まない雨音

投稿:▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁  
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音楽チームに投稿してた短編小説です

小説もコメントもほとんど変えてないと思います、

多分。。。


下のコメントに1話ずつ(全7話)投稿していきます

あとがきも一応書こうと思ってます


感想とかもらえたらめっちゃ喜びます

気が向いたら色々直して新しく投稿するかも


過去作だし素人中学生だし温かい目で見てね、


『止まない雨音』

unstoppable rain sound


読んだあと感想とかくれたりしたらめちゃくちゃ喜びます

誤字脱字は見逃して!((小声


全話投稿完了前でも感想くれて良いですよ(/ω・\)チラッ

コメント

    ふみづき さん: 2020-05-04 22:28:01

    やったー!

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    アタマはサカナ等やわ さん: 2020-05-05 10:51:19

    音楽チームでこっそり見てました(笑)
    楽しみにしてます!

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    アタマはサカナ等やわ さん: 2020-05-05 10:53:49

    あ…お話するのは初めてでしたよね…
    すみませんでした…。
    はじめまして、アタマです()
    よろしくお願いします…!
    (やってしまった…)

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    ⏩ふみづきs ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-05 11:52:04

    いえーい!((謎ノリ

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    アタマはサカナ等やわ ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-05 11:56:20

    はじめまして! 私もこっそり見てました笑
    読み返してみると色々雑だったりするんですけど
    あえてそのまんま投稿していきます、
    気分で落としていくので気長に、、!笑
    ところでアタマさんて呼んでも良いですか((急

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    ⏩アタマはサカナ等やわs ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-05 11:57:43

    ミスった!!タイトルのとこさん(s)付け忘れてました
    ごめんなさい!!!

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    ▷ 止まない雨音 + 1話 ◁ ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-05 12:03:53

    ╋┼╋┼╋┼╋┼╋┼╋┼╋┼╋┼╋┼╋┼╋┼╋┼╋┼╋



     ピッ ピピッ ピピピッ ピピピピッ
     規則的な高い機械音がぼんやりしてきた夢の中で鳴り響く。
    否、夢が想像に変わり始めた頃に、ここが現実だと、時間に
    追われなければならない現だと、示すように時計が喚いた。
     耳が痛むようなその音を切りたくて、枕の上を目を
    閉じたまま手で探る。
     かつん、と爪がプラスチックに当たって、目を開けた。
    顔の前にデジタル時計を近づける。現在午前5時21分。
     なんでこんな時間にセットしたんだ、私。普通7時とか
    6時半とか····でも今日は休みだから、セットするとしても
    8時とかにして欲しかった。まあ昨日は疲れてたしな。
     昨晩は夜更かしがしたい衝動と、夜に大いに力を発揮する
    睡魔が闘っていた。因みに私は夜更かしがしたい衝動の
    援助に回ったから、目を凝らしてこのデジタル時計の
    アラームをいじってたのだ。
     疲れてるのなら、早く寝れば良かったよな。
    ここ最近ずっと雨で、気圧も低いっていうのに。
     ····自律神経乱れまくっているんだから、低気圧で体調が
    悪くならないわけがない。あー。吐きそう。
     家の外で、大粒の雨はザァーと煩く地団駄を踏む。
    『雨····』
     何気なく溢した声が木霊する。
    太陽は曇りでも雨でも出番がある。でも雨は雨の日しか
    出番がない。なんて、私は惑星と気候を比べようとしてる
    訳ではない。あるクラスメイトの顔を頭に浮かべている。
     虹福(にじさき)陽花(ひばな)。素敵で、太陽のような
    花のような虹のような彼女に、良く似合う名前。
     幸せそうに笑う彼女に、私も強く惹かれた。でも、
    どうも私と彼女は合わない。苦手とか嫌いとか、
    そういう彼女に対する嫌悪や嫉妬がある訳ではない。
    多分私が、勝手に壁を造ってしまうせいだと思う。
     誰にでも分け隔てなく光を降り注げるひばな。
    離れれば幻想的に見えたとしても、本当は冷たくて
    暗くて重い雨。
     壁は、作らなければならない気がしたんだ。
    低血圧で怠い体をゆっくり起こす。

     山内(やまない)あめ。よく“やまうち”と間違われるけれど、
    私は“やまない”。名付け親には悪意しか感じない。だって
    なんて縁起の悪い名前。ま、父のことだろうから勘的な
    ものなんだろうとは思うけれど。····いや、尚更傷付く。
     それにしてもこの雨、随分長引くな。
    『止まない、雨。』
     また、声が木霊した。
    ベッドから足を下ろすと、氷の上に立っているくらいに
    床が冷たく感じて思わず足を浮かせる。ぞわり、と、その
    冷たさが背筋を駆け上がってくる。
     スリッパ何処やったかな。なんて考えながらまた布団を
    被った。卒業式はうんとお洒落な髪型で参加したくて
    伸ばしている髪が、ばちばちと小さく光を発しながら
    もこもこの羽毛布団にくっつく。
     気持ちが悪いけれど眠気にも温もりにも勝てない。
    寝ればどうせ分からなくなるしそのままで良いや────····

     ピッ ピピッ ピピピッ ピピピピッ
    畜生。と思わず舌打ちしそうになったのをぐっと堪えた。
     あー。そういえばそうなんだった。
    この目覚まし時計、アラーム解除するまで何度止めても
    5分置きに鳴り続けるんだった。
     眠りかけてたのに。
    でもなんだか、静電気の酷い布団や煩く現を嘆く目覚まし
    時計。大袈裟だけれど、世界にまで起きろと言われている
    みたいに感じて、渋々布団を剥いだ。
     寒い。
    ベッドの隣の、ランプが乗った低めのチェストに乱暴に
    乗せられたパーカーを掴む。その上に置いてあったテレビの
    リモコンが転げ落ちた。
     目眩を我慢しながら体をゆっくり倒して拾い上げる。
    ····よし、壊れてない。
     雨の足音を掻き消したくてテレビをつける。
    丁度天気予報が入って顔をしかめた。
     美人で、しかも面白いと人気のリポーターが大雨の中
    傘をさしてこの天気による被害について声を必死に
    張り上げている。でも、雨に負けていて聞き取りにくい。
     不意に、彼女の頬に雫が伝ったように見えた。
    今のは········雨?いや、涙か?
     そういえば、先日彼女の家がそこに住む家族ごと
    氾濫した川に呑まれたと聞いた。
     ネットニュースだから本当かは分からずじまいだったが、
    もしかしたら本当の事だったのかもしれない。
     次に聞こえた言葉に、私は強く目を閉じて耳を塞いだ。
    掻き消したくて仕方なかった雨音が一瞬聞こえなくなる。
     まるで、世界から音が消えたように。

     そっと目を開ける。
    暗い部屋、鳴り響く雑音、高い湿度、低い気温。
    じっとりした重い空気感。ふと、さっきのリポーターの
    辛そうな叫び声が痛いくらいにはっきりと脳裏に響いた。

    ────《この大雨は止む見込みが暫く無いとのことです》

     脳が串刺しにされた気分だ。雨が止まないことに
    ショックを受けた訳じゃない。ただ、確かに彼女から
    悲壮や憎悪を感じたから。被害妄想だとかって嗤われるかも
    しれない。それにこの雨と私が関係している訳でもない。
    けれど私には確かに、雨なんて大嫌い、そう叫んで
    いるように映った。その叫びが、突き刺さる。
     『あー、もー····』

     雨なんて、あめなんて、止まない雨なんて、

    『私だって、大っ嫌いなんだってばっ!』
     私の叫び声の余韻も、雨に掻き消される。
    蹴飛ばした羽毛布団がベッドから落ちて、温もりが離れた。
     溢れた涙をパーカーの袖に染み込ませる。
    私の嗚咽も痛みも、こんな世界では誰にも届きやしない。
     リポーターがとうとう泣き崩れた。
    すぐに画面がスタジオに切り替わったが、切り忘れて
    いたのかリポーターが強く握っていたマイクが拾った
    彼女の音声が響く。

    《雨なんて····大嫌い、大嫌い、大嫌い········っ》


                嗚呼。


     恐ろしく静かに、彼女は叫んでいる。
     先程見た頬を伝う雫が、酷く澄んだ涙だったのだと気付く。
    フォローを上手くいれて話題を変えたアナウンサーに、
    仕事だと自分に言い聞かせてもどうしようもなく苛立った。
     しっかりと耳に届いた筈の悲痛な叫びさえ、周りには
    絶対に伝わらない。私だって、同じ痛みを感じることは
    出来ないが、明るいニュースや芸人のギャグに笑う彼らには
    絶望した。
     仕方ない。仕事だもの。仕方ない。
    それでも、仕事でも、抑えきれない感情が彼女には
    あったのに。


                 痛い。


     ピッ ピピッ ピピピッ ピピピピッ
    現実を嘆くアラームを止めずに、ひたすら泣いた。
     『痛い····』
    嗚咽と共に溢れた思いは掠れていて、甲高く喚く時計の音が
    少しだけか弱く聞こえたのは、きっと勢いを増した雨音の
    せい。
     『誰か、助けて········っ』
    どうしようもなく響かない叫びは、思いは、痛みは。
     この雨は。
    本当に、何時か終わりが来るのだろうか。
    訳の分からない感情が荒波をたてて私を呑み込む。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーーーー


              ❰ 止 ま な い 雨 音 ❱

                ❰ 第 1 話 ❱ 
              ❰ ア ラ ー ム と 叫 び ❱


    ーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーーーー


        分からないって、思ってるよりずっと痛い。
           分かってしまうって、時々残酷。
        分かって貰えないなんて、どうしようもない。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーーーー


        みんなみんな理不尽だから、我が儘だから、
             自分が大切なんだから、
          世界が理不尽なのは仕方ないのかな

                なんてね


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    早速落としていきました、 ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-05 12:05:52

    ひとことコメントふたつあるのは、1話2回投稿したからですね、
    色々間違えて。

    …ちょっと自分で見返すの恥ずかしい笑

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    ▷ 止まない雨音 + 2話 ◁ ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-07 09:18:08

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     雨は、予報通りに降り続けている。
    いつも朝早く起きてランニングと勉強をしているから
    その癖で雨なのに早く起きてしまった昨日。
     見たくないものを見た、という嫌な気分が今日にまで
    引き摺られてる。ネットでもちょっとした話題に
    なっていた、泣き崩れるリポーター。
     あれを見て、私は何と思ったか。
     自分でもよく分からなかった。ただ、気分は凄く悪い。
    同情?苛立ち?悔しさ?


                  分からない。


     でも泣き崩れるリポーターよりも記憶に染み付いたのは
    同じクラスの山内あめの顔。これもどうしてなのか
    解らないけど、似てる、そう思った。見た目も雰囲気も
    まるで違うのに。
     それでも、雨が嫌いだと嘆くその姿が、あめのいつも
    浮かべている笑顔と少し重なった。時々顔を逸らして俯く
    時の何とも言えない表情が何度も脳裏に甦った。
     それからは多分、心此処に有らずって感じだと思う。
    良く話したことはないし、ムードメーカーとか、そんな
    ポジションのわけでもないのに目立つ彼女。
     見た目が良い。今まで会ったことの無いような綺麗な
    女の子だとふとしたときに思うほど。止まない雨なんて、
    なんて素敵で良く似合う名前なんだろうと思った。
    私も自分の名前が気に入っているけど、もっと素敵だと
    思った。
     神秘的なような、周りから浮いて見えるほどの美しさが
    止まない雨という響きにぴったりなように感じたから。
     性格も良くていつもにこにこしているイメージがある。
    ただ最近は、そう、ちょうどこの雨が降り始めて
    少ししてからは笑顔が違う。ひきつってるように見える。
     そういえば、泣いてるところ見たこと無いかも。
    思わず顔をしかめた。溜め込むタイプなのかもしれない。


                 なんだか、痛い。


     これもまた良くわからないのだけれど、痛い。
     考えれば考えるほどぐちゃぐちゃになる思考も、何度も
    何度も浮かび上がってはすぐに消える彼女の笑顔も、
    どこか痛々しい。
     やりきれない思いばかりが溢れだしてきて、その感情の
    名も理由も意味も消し方も、何一つ知らない私はペンを
    握る力を強めた。ぽきんと折れたシャープペンの芯をつまむ。


                  分からない。


    ゴミの日に捨ててから空っぽだったゴミ箱にその芯を入れた。
     助けるべき?一人で乗り越えれる?
    て言うか、そもそも助けを必要としてる?
     それにたいして仲良くもない私に何ができる?
    乱暴に落書きを消ゴムで撫でると、ノートには私の気持ちを
    映すようにぐしゃりとシワがついた。
     イライラする。
    何に対して?自分?あめ?ノート?
     それとも。

     この止まない雨音が、私は嫌いなの?

     びりびりとノートを破く音が、煩い雨で世界から
    隔離された様なこの部屋に響く。鼓膜を乱暴に揺するように
    響くから耳が痛かった。
     この思考も、痛みも、感情も、
    止まない雨音も。

     簡単に捨ててしまえたのなら、楽だろうに。

     ゴミ箱に向かって投げた紙切れが、ゴミ箱の縁に当たって
    弾き返された。
     『無理だよね····そりゃそうだ』
     意味もなく音にした思考に、無性に泣きたくなった。
    せめて涙を流せたのなら、私は彼女のために何かが
    出来たのかもしれない。
     泣けない私は、薄情者か。
    それとも表面ばかり気にする偽善者か。
     何だっていいし、もう良く分かんないけど。
    笑いたくない、生きていたくない、なんて。
     初めての感情に少し驚いた。

     私は誰のために、何ができるんだろう。
    私は誰のために、何をしようと思えるのだろう。


                  分からない。


     稲光がして、ゴロゴロと低い音が振動する。
    その音が聞こえるまでの時間が不自然に長く感じたのは
    雷が落ちた場所が遠かったからか。


              もう何も、分からない。

                   否

              何も、分かりたくない。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーー


              ❰ 止 ま な い 雨 音 ❱

                ❰ 第 2 話 ❱
              ❰ 太 陽 と 宇 宙 塵 ❱


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーー


      どうして大人は、私たちに感情を教えてくれないのかな
      大切なものばかり、いつまで経っても分からないまま
        ぼんやりした言葉の意味が解るようになる日なんて
              本当に来るのかな

                なんてね


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    ▷ 止まない雨音 + 3話 ◁ ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-11 15:33:26

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     今日も気分は最悪。
    この低気圧で体調は優れないし、いくら雨が弱まったからと
    言って水上都市と化した住宅街の土地が乾いてくれる
    わけでもなく、歩く度跳ねる泥水が指定ジャージに付着して
    濡れるし汚れるしでもう本当に最悪。
     臨時休校にして欲しかったと思いながらも、なんだかんだ
    今日の授業は楽しみだった。今日はこの雨のため
    五時間授業で部活動も中止。そして主要五教科の授業は
    たった一時間。1年と2年の学年主任のミスがあったらしい。
     3・4時間目が家庭科の調理実習だったのは聞いていたが
    一時間目の美術と五時間目の体育は急きょ決まった。
     美術と体育は結構好き。あ、いや、運動は得意じゃ
    無いのだけれど。今やってるバレーの授業は楽しい。
    痛いし上手く出来ないしでいろいろ大変でも、それはそれで
    面白くて。それは私に限ったことじゃないみたいで、皆
    いつもより表情が生き生きしているように見える。

     テンションを無理矢理上げるようにそんなことを
    考えながら、古いせいか開けにくくなっている扉を何とか
    開ける。来週辺りに業者呼んで直して貰うって言ってたな。
     外の、曇りでも眩しすぎる光が校舎の色んな物に
    遮られている校内は暗くて見にくい。何度か瞬きを
    繰り返して目を慣らそうするけど、殆ど意味は無いようで
    自然に慣れてくるのを待つことにした。防水に特化した
    ハイカットのスニーカーを靴擦れした足を気遣いながら脱ぐ。
     本当は長靴が良かったのだけど、下駄箱が小さいせいで
    先週履いてきたとき、入りきらなくて四苦八苦したから
    こっちにしてみた。若干ジャージが濡れたが、靴下が
    濡れなかったので良しとする。こんなこともあろうかと
    替えのジャージも用意してあるし。

     同じようなことを考えている生徒はまあまあ居て、
    狭い更衣室はかなり人口密度が高かった。
     ただでさえじっとりした空気に騒ぐ女子生徒の甲高い声が
    木霊して、美術やら体育やらで上げた気分が急降下した。
     この辺で一二を争う偏差値の低さが良く分かるような景色。
    甘ったるい香水の匂いやハンドクリームの匂いが
    充満していて気持ちが悪くなる。逃げるように更衣室から
    出ると、向かいにある女子トイレの鏡の前を占拠して化粧を
    する女子生徒が見えてこっそり眉を潜めつつ見てない
    ふりをした。
     校則破るの好きかよ。なんて悪態をついて、あとから
    首を振って考えを正した。見て見ぬふりをした私には
    そんなこと言える権利はないよな。

     低血圧のせいか、さっきのキツい匂いのせいか、
    くらくらするのを堪えて階段を上る。楽しみにしている
    ことにして気分を上げた授業もなんだか億劫になってきた。
     霧雨だったから聞こえなかった雨音が耳に入ってきて
    踊り場の窓を覗き込むと、大粒の雨が降り始めている。

     今日は良い日にはならなさそう。
    そんな私の天気とは正反対のような明るい声と、どこか
    リズミカルな足音に振り返る。
     「あめ、おはよ!」
    とん、と軽く押された背中に、やっと今日のリュックの
    中身がいつもよりずっと軽いことを思い出した。
     『あ、あぁ。ひばなか、はよぉ』
    どもったかと思えぱ用意したよりも間抜けな腑抜けた声が
    出て、それを隠すみたいに笑顔を張り付けて固める。
     最近はなかなか笑顔が作りにくかったけれど、今日は
    簡単に笑えた。前は疲れてただけなのかもしれない。

     「雨凄いねー」
    自然に横に並んで階段を上りながら、最近は誰もが1度は
    言ってしまう話題を提供する陽花。
     あ、空の雨の方ね。と楽しげに笑う横顔を一瞬見て、
    また視線を至るところにある窓に戻してそれを眺めた。
    『うん、いつになったら止むかなぁ』
     空の雨、という響きが少し気に入った私は胸の辺りから
    湧き出る笑顔を浮かべた。
     「やっぱりあめも雨止んで欲しい?」
    名前があめだとこういうとき紛らわしいよな、なんて
    考えながら頷く。
     『まあ。雨ってあんま好きじゃないし』
    正直言って嫌い、という言葉は呑み込んだ。陽花の瞳が
    揺れた気がしたから。
     「そっか」
    妙な沈黙が私たちに壁を作る。否、作られた壁を見せる。
     あっちはあっちで考え込んでいるみたいだから、私も
    沈黙を破る話題作りをやめた。

     各々は小さい喧騒が集まって、まだすこし居心地の悪さを
    感じる沈黙がその雑音をより一層強めて私に届かせる。
     はしゃぐ生徒の声、挨拶を交わす教師の声、怠そうに
    何かを話す生徒の声、ひそひそと嘲笑う悪口、ふざけ合う
    笑い声、足音、リュックの揺れる音、止まない雨音。
     毎朝号例の放送が日付のあとに、ここ最近同じ空模様を
    響かせる。
     最後の台詞の“頑張りましょう”は耳をつんざくノイズに
    掻き消された。
     響き、ぶつかり合い、強調し合う雑音がじわじわと
    心臓を汚く染めていく。

     今まで聞いたことの無いような、どくんっ、という
    気持ち悪い脈が脳に響いて、息がしずらい。
     同時に、私はすっかりその喧騒に飲まれてしまって音が
    上手く聞き取れなくなっていた。目に映る世界がぐわりと
    揺れては歪み、元に戻って、また回る。上下左右何もかも
    向きが分からなくなって、地面が踊ってるくらいの波が
    足をとり、転びそうになる。

     それでも平静を装って、ただ、手すりには掴まって
    階段を上りきる。
     「大丈夫?」
    顔めっちゃ青いよ、と心配そうに眉を潜める陽花に向けて
    笑顔を作る。
     『ちょっと目眩がしただけ』

    ちょっとなんかじゃない、なんて言えたら。

     一昨日の痛みが甦り、急加速。
    大丈夫じゃない。
    もう無理なんだって。
    限界だって言えたのなら。
    助けてと貴方に向けて叫んだら。
     ねえ、貴方なら。


            陽花なら、助けてくれるの?


     泣きそうになって慌てて俯いた。
    私の嫌いなあれが、空の雨なら。
     ならば私は。

     私は、何にならなれるのでしょうか。

    軽い筈のリュックがひどく重く感じた。
     いや違う。
    私を取り巻く空気さえ、きっとあめのせいで重くなったのだ。
    じっとりと、重く。暗く。


                  息苦しく。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーー


              ❰ 止 ま な い 雨 音 ❱

                ❰ 第 3 話 ❱
                ❰ 周 辺 注 意 ❱

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーー

           こぼれるのも笑顔あふれるのも笑顔
                 うかぶのも笑顔
                 それと、きっと
              張り付けるのも浮かべるのも
                作るのも偽物だって
               ちゃんと笑顔だよ
                 だから、きっと
            私たちにも福はやって来るはず

                 なんてね


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    ▷ 止まない雨音 + 4話 ◁ ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-16 18:13:48

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    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーーー

        話の進みが速くなって訳分かんなくなってるような
      感じがしなくもないですがここ重要なシーン(仮)です
              シリアスってきつい····

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーー


     雨は予想より早く止んだ。
    それでもこの雨の被害は凄くて「悪夢の止まない雨」なんて
    呼ばれていたり。雨の残り香がする此処はまだ雨水に
    浸っている。

     一昨日早退してから学校に来ないあめをぼんやりと思い
    浮かべる。なんで自分がここまで気にしてしまうのか
    分からない。友達、と言うよりはたまに話すクラスメイト。
    確かに周りより目立つけど、気にしているのは私だけ
    みたいで。元気なくない?って皆に聞いても、そう?と首を
    かしげられた。
     気のせいかもしれないという気には不思議とならない。
    よく鈍いと言われるけど、その分か直感的なものは人より
    よく当たる。····と、自分では思っている。
     一昨日階段で話したとき、凄く具合が悪そうで。確か
    自律神経がなんだとかって聞いたような····

     思い出しながらペンを握る。教科書をぱらぱらと捲っても
    ノートの字をなぞっても、まるで何も頭に入ってこない。
     そこに文字があって、何処かの言葉や記号があって、
    ぼんやりと眺めるとすこしだけ歪んだり泳いだりして見える。
     勉強する気分にならない。ノートの端に傘と雫の絵を
    描いて塗りつぶして。
    雲。太陽。花。虹。傘。雨。てるてる坊主。
     どこか不格好に歪む落書きを眺めていると、ノートが
    逆さまだったことに気付いて向きを直した。

     あめ、大丈夫かな。

    ふと、雨が屋根の上を走る音が聞こえた。窓を振り返っても
    雨なんて降ってない。降ってないけど、今。
     雨の音がした。止んだはずの雨が、まだ降り続けている
    景色が見えた気がした。
     ぐるぐると目に映る景色が回り始める。明るかった部屋が
    太陽が隠れたせいで暗くなるのだけが辛うじて分かった。

    「姉ちゃん!姉ちゃん停電!停電し····た········」
     弟が私の部屋に飛び込んできて、気付いたら部屋の
    真ん中で立ち竦んでいた私の顔を見ると目を丸くして
    動かなくなった。
     口を何度か開けて閉じてを繰り返して、掠れた声を出す。
    「なんで、泣いて····」
     「········え····」
    やっと見えている景色が自分の部屋に戻って、でもぼやけて
    前はよく見えなくて。
     「わかん、ない····」
    何故か溢れ出している涙を部屋着の袖で拭って、窓の
    外を見た。


              雨が、降っていた。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーーー


             ❰ 止 ま な い 雨 音 ❱

               ❰ 第 4 話 ❱
            ❰ 逆 さ ま の て る て る 坊 主 ❱


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーーー

     羨むばかりじゃどうしようもないし、どうにもならない
              そんなの分かってる
    みんな同じだけ苦しいし、今この時もっと辛い人だっている
                そんなの知ってる
             それでも思ってしまうの
          「良いな」「羨ましいな」「狡いな」
         ねえ、何も分からないまま溢れ出してしまう涙は
               どうすれば良いんだろう


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    ▷ 止まない雨音 + 5話 ◁ ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-25 10:07:19

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     読んでるよーって言ってくれる人がいるとやる気が出ます
          めちゃめちゃ嬉しいです!ありがとう!!
                 よし
        3年生の方々が卒業する前には完結させなければ!
            頑張ります!o(`・ω・´)○


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーー


     一旦雨が止めば暫くは降らない、という予報は大きく
    外れた。この低気圧のせいか溜まりに溜まった疲れのせいか
    熱を出した私は4日ぶりの登校。少し緊張するのは
    否めなくて、不安定な自律神経が嫌だと喚いている。
     ただでさえ速い脈がさらに速くなって息がしづらい。

     立て付けの悪い扉を開ける。直すとか言ってたけど、
    この大雨のせいでそれは延期になったらしい。
     「あっ!あめ!風邪引いたの?大丈夫?」
    下駄箱の前で靴を履き替えていたクラスメイトに声を
    掛けられる。

    『おはよ、うん。喉の風邪だったから声あんまり出ないや』
    がらがらに渇れた声で返すと、心配そうに細めた目をさらに
    細めて「辛そうだね」と言った。


     ずれたマスクを直しながら、マスク越しでもわかる
    くらいにわざとらしく苦笑して見せた。

     枯れた声から辛そうだと感じたのか、優れない顔色か、
    マスクか、よく分からないけど辛かったのは本当。でも
    言うほど熱は高くなかったし、だから曖昧に笑っただけで
    別に笑うしかできない訳じゃ、とつい言い訳を考えてしまう。
     目眩や動機が最近酷いのも、風邪と一緒に診てもらったら
    お医者さんに「頑張るな」と言われてしまった。

    お医者さんが言った頑張る、は愛想笑いとか、抑えすぎた
    感情とかかなぁと思うけど、頑張っている自覚は
    無かったから曖昧に笑った····って、また私は愛想笑いか。

     少し大きい上靴が足を上げる度にずれて歩きにくい。
    朝だからか風邪だからか、怠い体をゆっくり動かすと
    多少の目眩。多少········でもないか。大分揺れてる。

     「昨日の停電やばかったよね~」
    いつの間にか私の周りにクラスメイトが増えていたから、
    適当に相槌をうつだけでもなんとかなる。
     階段を踏み外さないこと一心に足を上げる。

    美術の作品のステンドグラスは休んでた間に飾られた
    らしいけど外があまりに暗いからいまいち綺麗には見えない。

     自虐か、なんて思いつつも作った青を基調とした
    雨のモチーフの私の作品は見事に周りに埋もれている。
    硝子の靴なんかのモチーフのステンドグラスとは色や
    雰囲気が丸被りだ。
     やっぱり、アクセントとして太陽でも入れれば
    良かったかな。あぁでも、と考え込んでしまったけど、
    美術の作品にここまで力を入れる生徒は浮くかもしれないと
    思うと、自然と視線がずれた。

     相槌をうつだけではやっぱり足りないような気がして
    クラスメイトの会話に混じるが、がらがらの声は
    みっともなくて、なんとか絞り出したいつもの声は
    弱々しくて、声を出すのが起きて一時間にして嫌になった。

     ふと聞こえた陽花の声に思わず反応してしまう。
    私は陽花を太陽と重ねて、救世主になってくれるとでも
    思っているのか。救世主とか、笑える。
     「あー!あめ来てる!おはよ!」
    嬉しそうに、楽しそうに、幸せそうな笑顔をつくって見せる
    陽花は、いつもより元気がないようだった。

     『はよー、ごめんこんな声で····』
    枯れた声で返すと、驚いたような、それでいて
    安心したような顔をする。
     「無理して声出さなくて良いってー!」
    またわざとらしい愛想笑いを浮かべる。

     それよりも気になって仕方ない。
    『陽花、目腫れてない?』
     泣き晴らしたみたいに腫れた瞼の下は、あの大きくて
    濁りの無い瞳が、ゆらゆら揺れている。
    「あ、あぁ、これね。寝すぎたかなぁ。昨日疲れちゃって」
     へらりと笑いながら、一瞬右斜め上を見てから喋り始める。
    ········あ、嘘。
     心理学に興味があったから嘘を見破るのは得意かも
    しれない。右斜め上を見るのは嘘を考えるとき。目が合わず
    視線が下にずれているのも嘘をつくときによくある。

     もしかして、泣いたの?

    触れられたくないようだから、そっかあ、なんて返して
    話題を変える。

     ゆらりゆらりと瞳が揺れているのが見ていられなくて
    クラスメイトの玲羅(レラ)に視線を移す。玲羅はきゃあきゃあ
    はしゃぎながら、彼女が所属しているバレー部の男子の
    先輩の話を始めた。

     色恋沙汰が好きって言うより、可愛い顔した人が好きで
    優しくしてくれる先輩も好きで、先輩の話なら所謂カースト
    トップの女子の輪にも難なく飛び込んでいく鋼のメンタル。

     玲羅とは私も気軽に喋れて、何かと気に掛けてくれて
    いるのは過保護の気がしないでもないけどありがたい。
     安部玲羅(あんぶれら)という名前は、イントネーションを
    変えるとumbrella、つまり傘で、しかも安部をやすべと
    読まれがち。なんて私と少し似ていて自然と仲良くなれた。

     玲羅は強くて格好良い。

     周りに合わせて笑っていると不意に涙が沸き上がってくる。
    あー、情緒が不安定。他人事みたいな思考に苦笑しつつ
    お腹痛いから保健室行ってくる、と病人を装って教室を
    出た。
     出ようとした、その時、ぱちりと陽花と目が合う。


                 嗚呼


        そんな顔見たら、救世主なんて、笑えないよ


     煩くて煩くて煩わしくてどうしようもない雨音が
    涙腺を緩くする。
     泣きたくなんてないのに。


          だから雨は嫌いだって言ったんだ。

     
     
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーーー


              ❰ 止 ま な い 雨 音 ❱

                ❰ 第 5 話 ❱
           ❰ ゆ ら り ゆ ら り と 鈍 く 光 る ❱


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーオーハーナーシーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーー


         新キャラ出ましたね、安部玲羅ちゃんです
           名前が出てるキャラクターは3人目か····
      でもメインキャラって訳でもないので玲羅sideは無い予定
         あいだいろ先生の作品の雰囲気好きだから
       ステンドグラスとかぶっ込んで····((挟んでみたけど
          全くあいだいろ先生感出なかった。諦めよ。

        ていうか文脈とか流れとか書き方とか鈍りすぎだな
          投稿頻度落としちゃうと駄目だなぁ
            (投稿頻度とか言うけどま、だ五話目←)


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    ▷ 止まない雨音 + 6話 ◁ ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-26 16:31:36

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     あめに駆け寄るクラスメイトをぼんやり眺めた。
    どうしたの?とか大丈夫?なんて同じような言葉ばかり
    そこには跳ねている。別にその言葉たちは嫌いじゃない。
    私だってきっとそれしか言えないし。でもなんでかな。
    無責任だなって胃が、いや、脳か、体の何処かが
    重くぼやける。
     「大丈夫、具合悪いときたまになるんだよ」
    崩れたみたいな涙を笑いながら拭うあめの表情は、何処か
    見覚えがある。
     ぼんやり、ぼんやり、目の前の景色も思考もぼけていく。
    分かんない。分かんないよ。
     あめが泣く理由も、私が泣いた理由も、私が
    気にしてしまう理由も、嗚呼、なんで。どうして。
     廊下に飾られたステンドグラスが目に入る。
    あれ、あめのだ。青い蒼い雨。青い傘に落ちる白い雫。
    濁った白の雲。
     ぼんやり、ぼんやりしてた記憶に陽が当たる。


    ────「えっと····にじさき、ひばな、ちゃん、だよね?」
    一語一語、ゆっくり、噛み砕くように訊ねられる。
     濁りの無い色素の薄い赤茶の瞳、さらりと揺れる微かに
    茶色がかった真っ直ぐな髪。柔らかく端を上げた紅い唇は
    その白い肌に良く映えていて。大きな瞳に陽が反射して、
    校則の通りにきっちり整えてある制服がゆるりと踊った。
     綺麗ってこういう人のための言葉なんだろうな、と
    漠然とそう思った。
     ぼろぼろの木の椅子に引っ掛かって破けたタイツも、
    落とし物を届けたせいで走らなくてはならなくなって
    乱れたポニーテールも、さっきまでは必死に直そうと
    してたのにもうどうでも良くなってしまった。

     「あれ、違ったっけ」
    思い出すように左上を見上げる彼女の声にやっと我に返る。
     『ううん!あってる、にじさきひばなで合ってる!』
    席替えまで隣だからよろしく、と挨拶をかわす。
     陽当たりの良い窓際の席。後ろから2番目。太陽の光を
    受けてきらきら輝いて見えた。
     「あ、私はやまない、あめ。」
    人差し指で、宙にやまないあめと書いて笑った。
     「縁起悪い名前だよね」
    楽しそうに、でも困ったみたいに眉を下げて笑って、すぐに
    ぱっと表情を変える。
     「にじさきって珍しい名字だよね、どんな字書くの?」
    『んとねー、ニジにフクでにじさき』
     え、フクってどのフク?と言いながらノートとペンを
    取り出した。書いてってことかな、と思って受け取ると
    「書いてくれるの?」と言われた。違ったらしい。

     「へー!これでサキって読むんだ。」
    久しぶりの反応に何だか嬉しくなって、ついでに下の名前も
    付け足した。虹福陽花。
     名前かわいい、なんて言いながら彼女も自分の名前を
    記す。山内あめ。
     「うわあ並べない方が良かったぁ。改名でもしようかな」
    そう言いつつもあめは少し満足そうに微笑んだ。
     『そんなこと無いよ、やまないあめって、素敵だよ』
    神秘的できらきらしてて、綺麗だよ。
     「え、ありがとう····初めて言われたかも」
    嘘だ、素敵な名前なのに!と言うとあめは笑った。
     笑った、この表情が。
    「陽花ちゃんは、虹より福より花より、太陽なんだね」
     ひどく悲しそうで。はらりと崩れて舞って
    消えてしまうんじゃないかって思った。
     劣等感。それは彼女に抱いたものか、彼女が抱いたものか
    分からないけど、緊張とか高揚とか感動とか、色々
    詰め込まれた思考の中にはっきりその文字が浮かんだ。
     「雨なんか消しちゃえる、暖かくて明るい太陽みたい」────


     「一人で行けるって。大丈夫、大丈夫」
    ぼんやりしてた景色が徐々に色を持ち、光を持ち、音を持ち、
    はっきりしたものになっていく。
     そうだ。そうだった。
    入学式の日のあの顔がどうしたって忘れられなくて、
    同情か共感か分かんない感情の中から違うって言いたい
    衝動が沸き上がって。
     違うよ、あめ、違うんだよ。
    太陽はあめを消すものなんかじゃなくて。
     だって、太陽は────

     分かんないなんて嘘だ。本当は分かってたくせに。
    覚えてたくせに。泣いた理由だって分かってる。
    大丈夫って言った泣き笑いは、あのときの表情と
    一緒なんだ。
     ごめん、ごめんね。気付いてたのに知らんぷりして。

     『あめ』
    結局ひとりで教室を出たあめの背中を少し遅れて追っかける。
     振り返ったあめはやっぱり綺麗だった。目が充血してても
    雨で暗い校舎でも、不格好なステンドグラスが不揃いな
    間隔で並べられている中でも、綺麗。
     「····陽花?」
     暗くて良く見えないんだけど、と笑うあめ。

    『あのね、あめ。』
     息を吸う。
    今思ってること全部吐き出すなんて出来ない。
    私が持ってる言葉じゃ全然足りない。
     それでも言わなくちゃいけない。


              否、言いたいんだ


     『太陽は、雨を消すものなんかじゃないよ』


              雨は、太陽は。
                何時だって
     

     『太陽だけじゃ全部枯れちゃう』


             必要としあってたんだよ


    鳴り止まなかった雨音がぴたりと息を飲むように止まった。

     『私は、』

     喉も目も痛くて、息がしにくくて、視界がぼやけたから
    泣いてるんだなって解った。解った途端に声が震えた。

     届け。届け。

     『嫌いじゃないよ、止まない雨音』
     誰かの命を奪ったり、想い出を泥で汚したり、大切な
    ものを壊した止まない雨も。
     こんなこと言うのは不謹慎かもしれないけれど。

    『止まない雨は、あめが思ってるより、』

     その濁りの無い大きな赤茶の瞳から、はらりと雨が
    崩れて舞った。

     『きっとずっと綺麗だよ』

     だって。
    明るくなった校内でも、やっぱりあめは綺麗で。
    ねえ。ほら、太陽の陽の中だって雨は、あめは。
       
        
     
          消えたりなんかしなかったでしょ?
                       
                      
         
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーヤーマーオートーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーーー


              ❰ 止 ま な い 雨 音 ❱

                ❰ 第 6 話 ❱
             ❰ 晴 れ た 追 憶 と 天 気 雨 ❱


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーヒートーコートーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーーー

           太陽だって雨を必要としているし
           雨だって太陽を必要としているし
          だからこそ天気雨は綺麗だったりするのかな
              そうだったら良いな

                  なんてね


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    ▷ 止まない雨音 + 最終話 ◁ ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-29 21:49:17

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     ぐらり。揺れた気がした。でもいつもの目眩とは違って、
    気持ち悪くはならなかった。自分でも涙を溢した理由は
    よく掴めない。安心したのかもしれない。嬉しかったのかも。
    それとも陽花が泣いたのは私のせいだって罪悪感か。
     嗚呼、全部かもしれない。
    この日のことは上手く思い出せない。泣きすぎたせいか
    記憶が曖昧だ。

     胸にすとんと落ちる。なんて表現があるけど、陽花の
    言葉や涙は、私の思考にどすんと、重く大きな音をたてて
    落っこちてきた。絡まりあった雑念が邪魔して見えなかった
    空を久し振りに見た気がした。
     そんなつまんない生き方して、苦しいだけの思考を
    張り巡らして、そんなんで良いのかって平手打ちを
    喰らった気分。
     どん、と思いっきり突き飛ばされてちゃんと目の前の景色
    見てないと駄目でしょって叱られた気分。

     ありがとう。本当はもっと言いたいことがあったけど
    それしか音になってくれなかった。
     涙でぐちゃぐちゃの顔で笑えば、陽花は嬉しそうに
    笑い返した。
     嗚呼、ほら。陽花は太陽だ。
    雨の日だって空も地も照らせる、暖かくて眩しい太陽だ。
     ありがとうと、もう一度溢す。
     この日見た天気雨は、きっと忘れられないんだろうな。
    なんて、青春映画の台詞みたいなことを思った。

     でも私は、私は。
    もし太陽が雨を救えても、雨は太陽を救える?本当に?
    私は、雨は、止まない雨は、太陽に何が出来るって言うの。


    ────太陽だけじゃ全部枯れちゃう


     ふは、と笑い声が飛び出した。
    やっぱり私、馬鹿なんだよな。私が陽花を助けたことが
    ある無いは関係無い。太陽が笑ってって言ったんだ。
    雨が綺麗だって言ったんだ。そうだよ。
     ほら、山内あめ。いつまでくよくよしてんのさ。
    早く笑いなよ、あめ。
    笑えるんでしょ。笑えるんじゃん。あめ。
     太陽が私の近くで雨を照らしてくれるんだよ、
    早く立ち上がりなよ。

     少し前の思考を軽く吐いた息でさえ吹き飛ばせる気がした。
    壁を作らなければいけないってなんだ。陽花なら
    助けてくれるんじゃないかとか、なんて都合の良い話だ。
     なんとなくスクロールしていた青白いスマホの画面を
    ぴたりと止める。
     “泣き崩れたリポーターが報道番組クビに 批判の声殺到”
     “泣き崩れたリポーターに温かな声 思わず涙「ありがとう」”
     “「無理しないで」の声に尾芦朱杜が涙 「立ち直れそう」”
     尾芦朱杜(おあしすず)って····ああ、あのリポーターか。
    彼女に対する批判もかなりあったようだけど、それ以上に
    温かい声で溢れたとか。それが正しいか間違ってるかは
    今はなんだって良いと思う。
     思わず笑みが溢れた。だって、間違いも失敗も感謝も
    全部含めて誰かの希望になる話だと思うから。

     満足した私はそのブルーライトを断ち切って体が深く
    沈みこんでいるソファーから立ち上がった。
     明日、美術あるんだ。色鉛筆持ってきてって言ってたな。
    ぼーっとしてたからか聴こえなかった雨音が空気を
    細かく揺らす。
     確かに、少しだけ。ほんとに少し、少しだけだけれど、
    綺麗かもしれないと思った。

     手から離したスマホが初期設定のままの着信音を鳴らす。
    玲羅からのメールだ。何かと思って見てみれば、
     “傘だって雨を弾くものじゃないからね!
     調子悪いなら言ってよ
     明日説教してやる!!”
    なんて書いてあって。
     ああ良い友達を持ったな、みたいにらしくないことを
    呟いた。ほら、そうだ。何も友達は太陽だけじゃ無いでしょ。
     ああ、私は。
       
        
           
                 嗚呼


              俄然無敵な気分だ
       
         
        
     雨は嫌いだし、具合はまだ悪いし、愛想笑いだって
    無意識でもそうじゃなくてもしてしまうし、
    どうしようもないやりきれない感情に呑まれそうにもなる。
     それでも良い。それでも良いかもしれない。
    そう思うのは今だけだったとしても、呑まれそうになれば
    そんな風には思えなくなるかもしれないけど。

     私も、あの天気雨みたいに、綺麗に笑えるかな。

     らしくないなんて百も承知で、自分の部屋の窓に飾った
    持ち帰ったばかりのステンドグラスを見据えて頷いた。
     明日、ちゃんともう一度、陽花と玲羅にありがとうって
    伝えよう。届けば良いな。伝わったら良いな。
     リズミカルに聴こえた雨音は、ステンドグラスの蒼い雫を
    きらりと照らす。
     案外、綺麗かもしれない。

     灰色の雲から覗いた陽が雨色に染まって私の瞳に反射した。
      
      
    『ううん、ちゃんと綺麗だ』
      
      
       
       
     その後も暫く不安定な天気は続いた。
    「悪夢の止まない雨」はいつからか名前を変えて、
    雨が止んでも雨音が聴こえるような気がするほど
    長く衝撃的だったとかで「止まない雨音」と呼ばれている。
     でもあれだけ目まぐるしい時の流れだったのに大きく
    変わったことは特に無かったような。少し、少し遠回りして
    立ち止まって歩き出した、ただそれだけだったかもしれない。
     でもこの時間のお陰の変化を全部足したら、きっと
    ここまでの足跡を数えた時間と重なると思う。

     「分かりにくい!」
    思出話に花を咲かせていたのに、むくれた陽花が喚いた。
     「なにも、難しい言葉を幾つ使ったって無駄だよ」
    「それ自分が解んないからでしょ」
     「違うし」
    意地悪く笑う玲羅を陽花が睨んだ。

     この景色が当たり前になったのはいつか。
    随分昔だったように思えるけど、止まない雨音は
    5年前のことだ。部活に受験に高校生活に、それと私は
    下宿生活。目まぐるしい日々はあの頃で止まったわけでは
    なくて、まだ時の無情さや優しさを感じるときがある。
     「だって、あの頃のことを」
    ポニーテールをやめて髪をばっさり切った陽花が
    また何時かのように楽しそうに笑った。

     「青春と呼ばずしてなんと呼ぶ」

     それぞれの道を堂々と進む、なんて大きな声で言う自信は
    まだないけど。
     前より離れてしまう距離の中でも笑い合ってやる、なんて
    ことなら全世界配信で思いきり声を張り上げて何度も
    繰り返し叫べるくらいには自信がある。
     それはただの、まだ一緒に居たいという感情かも
    しれない。それでも離れ離れになるなんてきっとない。
     だって私たちは止まない雨音の中でとびきりの青春を
    謳歌したんだから。
     まだ脳裏で響き続ける雨音は、やっぱり綺麗だった。
     
     あれは誰がなんと言おうと一番の青春。それは木霊して、
    また何かを生むのだろうなと思った。
     きっと、誰がなんと言おうと世界一綺麗ななにかを。
        
      
      
        いくつもの雨音が私たちの傍を駆け抜けた
      
      
         
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             ❰ 止 ま な い 雨 音 ❱
       
               ❰ 第 7 話 ❱
             ❰ 雨 と 陽 と 傘 と ❱
     
     
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂ーーーーーキーリートーリーーーーー✂ーーーーーーーーーーーーーーーー
       
     
      ハッピーエンドは晴れ渡る空と虹だなんて、誰が決めた
           雨だって曇りだって綺麗なのに

                 なんてね
       
      
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    第1話 ❰アラームと叫び❱      2月10日
    第2話 ❰太陽とゴミ箱❱       2月13日
    第3話 ❰周辺注意❱         2月15日
    第4話 ❰逆さまのてるてる坊主❱   2月20日
    第5話 ❰ゆらりゆらりと鈍く光る❱  2月27日
    第6話 ❰晴れた追憶と天気雨❱    3月17日
    第7話 ❰雨と陽と傘と❱       3月17日
    あとがき              3月17日
     
        
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    ▷ 止まない雨音 = あとがき ◁ ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-05-29 21:50:54

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             ❰ 止 ま な い 雨 音 ❱
             ❰   あ と が き   ❱
       
       
        小説だって、全部説明的じゃ面白くないかな
          って言い訳しながら急展開完結です
          ゆっくりな心情の変化の筈だったし
        もっとこのあとぐるぐる悩む予定だったんですけど
          3年生の卒業が思ったより早く来ちゃって
             こういうラストになりました
          でも案外満足してる自分が居ます笑

          変わる、なんてすぐ出来るものじゃなくて
          色んな過去を思い出す度に少しずつ
        努力したり悩んだり無理したり笑ったり考えたり、
          色んな未来を思い描く度に少しずつ
      勇気を振り絞ったり踏み出したり挫けたりするのかな
              って私は思ってて

         伝わらない、届く筈無い、そんな痛みが
         「そんなこと無い」「届くんだよ」って
                和らいでいって
         その時に感じた痛みがどれだけだろうと
              汚く醜く感じていようと
            いつかきっと綺麗で大切で大きな
        想い出になる筈だっていう希望を表せてたら良いな
           特別な悲劇とか、そんなの無くたって
    劇的な波乱を乗り越え先にあるハッピーエンドじゃなくても
         痛みも希望も、色んなものが伝わるんだよって
          光を書けてたら良いな、なんて思ってます
      
      
                 最後に
        読んでくれて、本当にありがとうございました
       なんだか、ありがとうって叫び回りたい気分です笑
         本っ当に!ありがとう!!ございました!!!!
                感想待ってます!!
         歌詞化とかしてもらえたら泣いて喜びます!
             めっちゃめちゃ待ってます!!笑
       
      
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    はじめまして。 Orange range ×ok rock ▷▷らん さん: 2020-11-04 22:25:55

    らんといいます。止まない雨音、めちゃめちゃ好きで、毎回楽しみにしていました!本当に綺麗な文で、羨ましかったです。もう一度読めるなんて...。とても幸せな気分です。ありがとうございました。これから小説なんかも投稿していこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

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    ⏩らんさん (返信遅くなってすみません) ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-11-12 09:51:17

    わああ!!ありがとうございます!うれしいです!!
    あ、はじめまして、あの、音楽チームのとこで私もよく見させてもらってました…!うれしいです……!!
    小説!楽しみにしてますね、こちらこそよろしくお願いします!

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    ▶▶▶めーぷるさん Orange range ×ok rock ▷▷らん さん: 2020-11-13 19:00:52

    はじめましてです!そんな...。嬉しすぎます...。頑張ります!楽しみにしててください!あのう、らんってよんでほしいです...(ノ∀\*)いいですか?

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    返信ほんとに遅くて申し訳ないです🙏💦 ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2020-12-02 16:45:31

    え!!らん!!!わあなんか嬉しいです!!
    よければ私のこともぜひ適当にめーぷるとかめーとか(??)
    呼びやすいように呼んでください!

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    ああああ遅くなりましたごめんなさい!🙇 Orange range ×ok rock ▷▷らん さん: 2020-12-15 21:21:27

    じゃ、じゃあめーさんって呼んでもいいですかっ?

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    ⏩らんs ▷ めーぷる = れっどうぃんぐ ◁ さん: 2021-01-01 20:24:44

    大丈夫です!!と言うかむしろめちゃくちゃうれしいです…!
    めーさん呼びかわいい、!!

    あと反応遅くてほんとにごめんなさい………
    あの、めーぷるの感想用のページがあるんですが、そっちだとちゃんと反応できるので、よかったら💦
    リンク貼っておきますね、
    (https://theshare.info/zemi/感想/めーぷる-感想用__i26 )

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