『カクテル』を飲み(読み)始められる本
装丁デザイン:ヤスミヤ様
HP:https://yasumiya.storeinfo.jp
X(旧twitter):@yasumiyasumi0
組版・本文デザイン:9Q9H様(音桐様)
HP:https://9q9h-d.editorx.io/works
X(旧twitter):@9Q9H_design
はじめに
念願の「酒飲み」夢小説アンソロジーを主催したので、その装丁の備忘録になります。
執筆者6名それぞれが、長いお話が得意だったり、短いお話が得意だったり、酒飲む話ばかり書いていたり、酒飲む話を初めて書くであったり、さまざまな特色を持つ字書きだったこともあり、複数人の話が入った美味しい本=複数のリキュールなどが混ぜ合わさった美味しいお酒、ということで『カクテル』というタイトルにしました。
小説アンソロジーということもあり、本としての「読みやすさ」を失わないように、組版デザインも外部委託(おまけで後述)して、出来るだけ「シンプルに盛る」ことを意識しました(結局盛るのかという感じですが)
やりたかった仕様
やりたかった仕様は前々からの憧れだった下記3点です。
・ブックケース
・三方印刷or三方箔
・コスモテックさんで何らかの箔押し
※三方印刷・三方箔については、小説を読むときに目が散るかな…と思ったのですが、欲に負けて採択…とはいえ結果的に出来本を見て目が散らなかった(薄い色かつゆったりとした模様にしていただいたお陰かと思います。写真3枚目参照)ということを先述しておきます。
仕様・印刷所の決定
三方箔はそもそも予算感を知らなかったので数社見積をしてみたのですが、完全に予算オーバーで断念せざるを得なかった(給料何か月分だ…?)ので、気になっていた三方印刷を選択しました。それにより、印刷会社さんも決定。
コスモテックさんでの箔押しについては、冊子本体にやるのは横持ちなどの手間がかかることと、頼みたい印刷会社さん的に不可能なので、冊子外のパーツで考える必要がありました。
コスモテックさんはあくまでも箔押し加工のスペシャリストであり、印刷を噛ませるのであれば、印刷した用紙を持っていく必要がある…となると「箔押しのみのパーツ」にする必要があり、現実的に考えられるパーツとしては、
・カバー
・シール
になります。
※1cスミベタ印刷と角丸加工は御対応いただけるそうです(要ご確認)
全面箔カバーも憧れるな…とは思ったのですが、実物を見たことが何度かあったことと、今回ブックケースを付ける=カバーは無くても良いと思ったため、シールで箔押しを活かせる装丁に出来ないかと思案。
アンソロジーのテーマが「酒飲み」であり、タイトルも『カクテル』にしていたので「ブックケースを酒瓶にして酒のラベルを貼ったら面白いんじゃないか…!?」(装丁に落とし込むとシンプルだが盛れる)と思い、シールにしました。
ここまで決まったらコスモテックさんに早速ご相談。初めての問い合わせでしたが、とても迅速かつ丁寧に御見積・スケジュール感をご提示いただきました。なお、ワインラベルのような和紙系のコットン紙をご提案してくださったのがコスモテックさんです。立会もさせていただき、非常に貴重な経験ができました。ありがとうございました!
最後にブックケースですが、シールと冊子を別会社に発注して若干流れが煩雑になっている上に、装丁も組版も別のデザイナーさんに発注&初アンソロ主催ということで、これ以上自分から伸びる線を増やさないほうが良いな…と判断して、冊子と同じく大阪印刷株式会社さんでお世話になることにしました。(そのため、オーダーメイドや横入れなどの特殊ブックケースが候補から消えました。装丁を考えるうちにオーダーメイドにして酒瓶開けるみたいにしてみたいな~と思ったのですが「シンプル盛り」の初心と予算で我に返りました笑)
装丁デザインの発注
今回は装丁デザインをヤスミヤ様にお願いしました。前々から素敵なデザインを生み出していらっしゃる方だなと思っていたので、せっかくのアンソロということで勇気を出してヤスミヤ様のサイトから依頼。
依頼時にお伝えした全体コンセプトは下記です。
→
複数人の話が入った美味しい本=複数のリキュールなどが混ぜ合わさった美味しいお酒、ということで「カクテル」というタイトルにしました。非常にシンプルですが、カクカクしている感じもありますので、グラス感・キラキラ感が出せればと思っています。(中略)手に取っていただいた読者さんたちに送りたい体験としてはブックケースから本を出した瞬間「気持ちが上がる」といいますか「いい雰囲気のバーで綺麗なカクテルを手に取った時のような高揚感を味わえる本」「キラキラとしたバーでキラキラとしたお酒を提供された時のような幸福を感じられる本」にしたいと考えています。
←
これを元に、ヤスミヤ様に丁寧に根気よく御対応いただき、具体的な仕様・デザインに落とし込んでいただいた結果、
「ブックケースは、銀箔紙で、カクテル瓶型を抜き、その上に箔押しシールを貼る」
「ブックケースから取り出してもらう時に、バーカウンターで綺麗なカクテルを出してもらった高揚感を得るため、キャラクターのイメージカクテルの煮凝りみたいなキラキラな冊子にする」
が決まりました。いろいろやりとりでご負担があったと思います…この場をお借りして改めてお礼申し上げます。
そしてとうとう装丁デザインUP日。
「完成しました!」のご連絡受けて、やったー!と思いながらいそいそとファイルを確認して最初の一言。
「カクテルラベルにウツボが…カクテル飲んでるウツボがおる……!?!?」
というのも、あくまでもヤスミヤ様へは「イラスト」ではなく「デザイン」を発注していたため、完全に文字情報だけで美しく構成されるかと思っていたこともあり、まさかウツボが描かれているものがあがってくるとは1ミリも思っておりませんでした。
心を落ち着けて文章を拝見したところ、「頑張りました!」の文字。え、え、えー!!??と再び心拍数急上昇。わなわなと震えるとはあの事だと思います…もう何度お礼をするんだっていう感じですが、ヤスミヤ様、本当にありがとうございます。
また、表紙のデザインについても、キャラクターカラーがくすんでいる深めの色なので、キラキラで気分が上がる色に持って行ってもらうべく、ヤスミヤ様には苦労をかけました…正直印刷で出るとは到底思えないと思いながらも「蛍光青緑」みたいな色にしたのですが、さすがRGB印刷が得意と明記されている大阪印刷株式会社さん、とても美しい色を生み出してくれています。
そんなこんなで、仕様としてはとてもシンプルなのですが、コンセプトに沿って「読みやすいけど盛っている」アンソロジーを作ることが出来ました。
主催として思い入れがひと際強い本を、理想の形に持って行けたことを嬉しく思っています。手に取ってくださった方、ありがとうございました。※10/27のスパークでも頒布しますが…!笑
おまけ①冊子の表紙についてのひと悶着
当初、カクテルの煮凝りとしてキラキラとさせるために、大阪印刷株式会社さんで一番派手な紙と謳われていた「グリッターペーパーオーロラ」を使おうと思っていました。
しかし、発注時にまさかの欠品。諦めきれずに電話で問い合わせをしてしまったのですが、どうやら改良のためのようで、抄造が一か月後…ま、間に合わん!ということで、大阪印刷株式会社さんで2番目に派手な紙を教えてもらい「ステンドグラスペーパー」に決めました。
結果的に、グラスカット的な雰囲気を纏えたのでよかったなと思っています。それに加えて、電話でしっかりと派手さを確認できたのも良かったと思っています。電話口で相談に乗ってくださった大阪印刷株式会社さんのご担当者様、お忙しい中、ありがとうございました……!
おまけ②組版・本文デザインについて
装丁の記録サイトなので、組版デザインについてを記録してよいのかしら…と迷ったのですが、組版をしてもらうとやっぱり違う…!と実感しましたので、おまけとして記載します。
今回、小説のアンソロジーということもあり、作品・執筆者自身の「味」以外の部分で読むときにノイズになるものは出来るだけなくしたいと考えていました(作品ごとに場面転換のアキの行数が違ったり、区切り記号が違ったり、三点リーダーの数が違ったりするなど)
普段は縦式で不便なくやっているのですが、お原稿を預かるせっかくの機会に、是非ともInDesignで組版をしていただきたい…!と考え、同人誌の組版・本文デザインをされている方を探し、今回は9Q9H様にお願いしました。
おかげさまで、場面区切り記号をカクテルグラスにしたり、ノンブル文字を丸みのある可愛らしい文字にしたりできて、読みやすさに加えて良い点が多かったです。
入稿方法だけはしっかり読み込んで対応しなくてはなりませんが、おすすめなのでこちらに載せておきます。
(イメージ)
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