どうしてもPPなしで小口染めをしたかった

投稿:もみこ  
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 創作BL小説です。書けました。


 書けたのでやりたい装丁が

・本体は黄色の紙に鮮やかな一色刷り、タイトルなしで抽象的なオレンジグラデーション模様のみ

・それに透けるカバーでさらにオレンジのグラデーションを重ねる

・さらに透明ブックケースへ封入してオレンジのグラデーションを三重とし、そこにようやくタイトル表記

・ぜったい新書がいい(趣味)

・黄色とオレンジをダメおししたいから小口を黄色かオレンジにしたい……PPはかけたくない!

になりました。


 最初の三つは正直簡単ですが、最後はちょっと条件が厳しいです。

 ちょっと突っ込んでいうと、まずPPをかけずに小口染めをしてくれる印刷所さんがとても少ないです。(緑陽さん西村さんならやってくれると思う)これは小口部分に染料を噴霧塗布して、表紙についたぶんを拭き取るという工程があるらしいので当たり前ですが、マットPPでも可の印刷所すら少数派で、だいたいはグロスPPでのみ可の加工になります。これはかなり本の雰囲気が変わる!

 また、最近では小口印刷も発展して来ましたが、これもまた大体の印刷所でPP推奨の加工。また印刷機器の兼ね合いから新書の特殊紙はその中でも狭き門なうえ……まだ印刷所側でも模索中の技術の中で私(素人制作者側)がCMYKやRGBの色調整をしても求めているような鮮やか色染めは難しいかなと思いました。(2024年時点での所感です)


 という訳で最初は諦めて本文全てを色上質やまぶきにしたオンデマンド印刷としようと思っていました。(これは新書268pの小説に対して狂気の判断です)

 ですがその時、くりえい社さんからの告知が私の耳に入りました。

「他社印刷物をうちで小口染めするよー」とのことでした。

 そしてくりえい社さんは数少ない「標準でPPなし小口染めを請け負っている印刷所さん」です。ここにすれば本文真っ黄色なんて狂気をしなくて済みます。

 というわけでやることにしました。


 くりえい社さんによると

・小口染めの際に使う器具がオンデマンド印刷と相性が悪いため、オンデマンドはPP付きでしか小口染めを引き受けない

 そうです。そしてくりえい社さんの新書で268pを完全オフセットで刷るのは……予算的に厳しい……。

 なので「表紙さえオフセットならええんやな!」と割り切ることにしました。プリントウォークさんです。


 プリントウォークさんは表紙を特殊紙の色刷りにしながら本文をオンデマンド印刷可能、小部数でも装丁を非常に柔軟に変更出来る印刷所さんです。

 プリントウォークさんは自社からもくりえい社さんと申し送りを行い

・オンデマンド本文の場合、トナーの熱乾燥により本文用紙へ避けようのない波打ちが発生して小口染めが綺麗にいかなくなるかも

 と忠告してくれましたが、構やしねえ!やっちまえ!と私はなっていました。というわけで二社さんへの信頼で投げ込みました。

 また、プリントウォークさんの柔軟さにより仕様に変更を加え

・本文は小説むきの紙メインにした上で、本文二箇所(冒頭8pと本文中央8p)を色上質濃クリームへ変更

・指定色の紙を取り寄せてもらい、見返しに使用

 としました。

 小口染め染料と色上質の合わせについて相談させていただき、鮮やかでありながら本文紙替えと完全に一致し馴染む色合いを選択出来たのでとても嬉しいです。本文についても忠告にも関わらずとても綺麗で、滲みなどが一切ないため読書を妨げられることない仕上がりです。

 見返しも、薄めの柔らかいNTラシャの質感や開きやすさを損なわないまま雰囲気をプラスさせられてとても良かったです。タントのN-56をセレクトしましたが、安定して手に入る紙のため初めての取り寄せでもリーズナブルでした。イメージカラーがタントで指定出来たらガンガン取り寄せてええんや!この部数なら3000円以内だから!


 まあここまで来ればあとはシンプルなので

 カバーを蝋引きという手法で手製作しました。(紙はSUKEKAKEラップCoC使用)

 蝋引きは個人でも扱いやすいハンドクラフト手法ですが、透け感・手触り・耐水性がアップするので良いです。今回は薄っすらとしながら鮮やかでランダム性のあるグラデーションを作成するために用いました。


 それらを当初の予定通りプリントオンさんのブックケースに封入し、マツダプリントさんの和紙ラベルを貼り付けてトップ画像のような外観に完成しました。


 作品から装丁を繋ぐコンセプトは「作中のような出来事が昔にあり、主人公の片方が名刹の住職となる。それが記された時代も分からぬ古書が存在し(ブックカバーより下の本体)、現代で保管用ケースをつけられラベルを貼られている」です。

 ブックケースが移動時の不安解消と、主人公二人のイラストという最低限のとっつきやすさ担保になっており良かったなと思います。実物の迫力がかなりあります。(あと蝋染めに良い蝋を使ったのと、ラベルをお線香で炙ったので良い匂いがします)


 総じて作業が楽しかったです。


装丁詳細:

本体:プリントウォーク・コスモセット

表紙:NTラシャ黄色130kg・刷り色オフセットぼたん

見返し:タントN-56 70kg

本文:クリームバルキー・色上質濃クリーム・オンデマンドスミ


小口染め・検品:くりえい社


カバー:自家手製(竹尾さんでSUKEKAKEラップCoC購入・カット加工)


ブックケース:プリントオン・高透明フィルム300ミクロン・白+CMYK


ラベル:マツダプリント・和紙大礼紙

コメント

    まだありません。

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