「小型無線多機能センサ」の歩み
「小型無線多機能センサ」は,国際電気通信基礎技術研究所(ATR)が実施した情報通信研究機構の研究委託「日常行動・状況理解に基づく知識共有システムの研究開発」(2004年~2009年),「eナイチンゲールプロジェクト」の成果を元としています.
本プロジェクトは,医療ミスの防止や医療従事者の負担軽減のための知見の獲得を目的として行われました.方法としては独自開発した小型装着型センサを使用して医療従事者の業務を計測・分析し,リアルタイムで90%以上の看護師の行動識別(*)や自動記録を可能としました.この研究の中で,センサネットワーク,機械学習,行動識別,業務分析,無線タグを使用した屋内位置計測等の多くの成果を得ると共に,無線タグを使用した位置計測技術や複数センサの同期技術などの知財の特許化を行いました.
(*)点滴のルート作成のような作業の他に,定型業務を手順通り行っているか等も分析しました.例えば衛生的手洗い手順だけでも40工程に分類し,各工程に抜けや順番の入れ替わりが無いか,十分な時間行っていたか等を視覚化します.
当時,この研究を行うのに適した小型装着型センサが市場で見付からなかったため,自ら研究用に開発を行うことにしました.これが現在ATR-Promotionsが販売する「小型無線多機能センサ」の原型です(2004).やがて学会発等で同センサの販売を求める声が大きくなったことから,一般販向けの小型無線3軸加速度センサとして販売開始したのがWAA-001(2006年)です.その後,販売開始後にお客様の声をお聞きしつつ機能の拡張や改良に努め,6軸(加速度,角速度各3軸)かつ内蔵メモリへの同時記録可能にしたWAA006(2008年),各センサの計測レンジ拡大と共に3軸地磁気センサを搭載して9軸センサとしたWAA-010(2011年),計測精度の向上と気圧や温度センサ等を搭載したTSND121(2012年)を発売しました.そしてTSND121発売以降,企業・病院・大学研究室等の600を超える組織のユーザにご利用頂くと共に,現在も医療機関や企業を中心にユーザが増え続けています.
現行製品のTSND151は,TSND121に姿勢角計算機能を追加し,内蔵メモリを4倍にすると共に医療用にも使用される高精度16bit ADコンバータを内蔵するなど,機能拡張を行ったハイエンド製品です.もう一つの現行製品であるAMWS020は,「動き」に特化したセンサとなっており,内蔵するセンサは加速度・角速度・地磁気センサの合計9軸センサのみとする一方で,計測レンジおよびサンプリング周波数の上限も上げ,同時に低価格化を行いました.
