倫理審査とは何ですか?

🔬研究・実験の「倫理審査」って何? あなたの安全を守る大切な仕組み


私たちの暮らしを豊かにするために日々、世界中で大切な研究が行われています。

もしあなたが「新しい薬の臨床試験」や「心理学のアンケート調査」など、研究の協力者(被験者)として参加を考えたことがあるなら、「倫理審査」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

この倫理審査とは一体何なのでしょうか?


🧐 倫理審査とは?


倫理審査(りんりしんさ)とは、大学や研究機関が、人(被験者)を対象に行う研究や実験が、科学的であるだけでなく、倫理的に正しい方法で行われるかを、事前に、公平な第三者の目線でチェックする仕組みです。

簡単に言えば、「この研究を、被験者の安全や人権をしっかり守ったうえで行って良いか?」を判断するお墨付きを与えるための手続きです。


📌 誰が、何を審査するの?


この審査を行うのは、通常、その研究機関内に設けられた「倫理審査委員会」という組織です。委員会は、以下のような多様な専門家で構成されています。

  1. 医学・科学の専門家(医師、生物学者など):研究の科学的な妥当性や、安全対策が十分かをチェックします。
  2. 法律の専門家(弁護士など):法的な観点から人権侵害やプライバシーの保護に問題がないかをチェックします。
  3. 一般の視点を持つ人:研究機関と利害関係のない一般の方も参加し、専門家だけの偏った判断にならないよう、被験者側の視点を反映させます。


🏢 審査委員会はどこに設置されているの?


倫理審査委員会は、研究を実施する主体となる機関ごとに設置されています。


1. 大学・病院の場合


  1. 原則として、大学や病院ごとに設置されています。
  2. 特に医学系の研究(臨床研究など)を多く行う大学病院では、厚生労働省の指針に基づき、非常に厳格な「治験審査委員会(IRB)」や「倫理審査委員会」が設けられています。


2. 企業・一般研究機関の場合


  1. 製薬会社や医療機器メーカーなどの企業、あるいは国立研究所などの一般研究機関でも、ヒトを対象とした研究を行う場合は、倫理審査委員会の設置が義務付けられています
  2. 企業が自社で設置する場合のほか、外部の専門機関に審査を委託する形を取ることもあります。
  3. 倫理審査の存在は、大学や公的機関だけでなく、研究に関わる全ての組織に求められる、現代の基本的なルールなのです。


⏳ 審査にかかる期間はどのくらい?


「研究を始めるために、倫理審査にはどのくらい時間がかかるの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。審査期間は、研究の内容や委員会の開催頻度によって大きく異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。

項目

審査期間の目安

書類の準備・提出

研究者側の作業で数週間~数か月

委員会での審査

1か月〜3か月程度

修正指示後の再審査

修正の程度に応じて追加で数週間

委員会は通常、月に一度程度の開催が多いため、書類の提出時期や修正の有無によっては、承認を得るまでに数ヶ月かかるのが一般的です。

この長いプロセスは、研究者が独りよがりな計画になっていないか、委員が時間をかけて慎重にチェックしている証拠であり、実験参加者を守るために必要な時間なのです。


🚨 過去の教訓:なぜ倫理審査は厳格になったのか?


現代のように厳格な倫理審査の仕組みがなかった時代、研究者が倫理を欠いた行為を行い、多くの被害者を出した苦い歴史があります。この反省こそが、現在の倫理審査制度の基礎となっています。


悲劇の一例:タスキギー梅毒研究(米国)


第二次世界大戦前の1932年から約40年間、米国では「タスキギー梅毒研究」と呼ばれる非人道的な研究が行われました。

  1. 研究内容: アフリカ系アメリカ人男性600人(梅毒患者399人、非患者201人)を対象に、治療を施さず、梅毒が人体に与える影響を追跡調査しました。
  2. 被害: 研究期間中に特効薬であるペニシリンが開発され、一般に広く使われるようになったにもかかわらず、患者たちにはその事実が知らされず、治療も行われませんでした。
  3. 結果: 被験者の多くが死亡したり、梅毒の後遺症に苦しんだり、病気が家族に広がるなどの深刻な被害を受けました。

この事例は、「研究の目的達成のためなら、個人の人権を無視して良い」という考えが、どれほど悲劇的な結果を招くかを示す象徴的な事件です。

この反省から、被験者への十分な情報提供自由意思に基づく同意(インフォームド・コンセント)、そして第三者による厳格な倫理審査が、世界共通の絶対的なルールとして確立されることになったのです。


✅ 私たちが知っておきたいこと


あなたが研究への参加を検討する際、その研究が「倫理審査委員会の承認を受けている」という事実自体が、安全性の大きな保証となります。

研究協力者向けの資料や募集要項には、必ずこの承認を受けている旨が記載されているはずです。もし疑問や不安に思うことがあれば、遠慮なく研究者や募集元の窓口に質問しましょう。

倫理審査は、実験に参加する人々の安全と権利を守るためにある、とても大切な安全装置なのです。


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