クリアトナー/イラストフォントデザイン

投稿:つる  
ブックマーク 24

#字書きが絵描きにお願いせずに素材やフォントや写真を駆使して作った表紙

というタグでいまだにいいねをもらうのでこちらにも上げておきます。


クリアトナーを使ってみたい!

いつだって同人装丁の欲望の基本はやってみたいであります。

クリアトナーに興味があって、新刊の内容が合致したので利用しました。


※クリアトナー印刷とは

透明なトナー(ニスのような透明インク)で印刷したものです。

ニスやエナメル加工と違う点は盛られてないこと。

凹凸はなく、傾けた際の光の反射によりクリアトナー部分が光って見えるというものです。

あとトナー印刷なので一律料金で面積制限がない場合があります。印刷全面刷りが可能です。

用紙全体へのかすかなデザイン配置もかわいいし、一見では判らない隠されたデザイン要素とか遊べる加工ではあります(ニス盛りより透明箔のほうが似ているかもしれません)


本の内容と加工の親和性

自分の本を作る場合、コレクションアイテムとしての意味合いもあり、表紙と内容はもとより、加工もぜ~んぶコンセプトが合致してると自分が幸せになります。

この本は内容が「日常生活の中でときおりクラゲを幻視する」というもで、光の加減でふわっと浮かび上がるのがぴったりだったので、タイトルと合わせて光の加減で魚が見えるようになるととても「イイ!」という気持ちでクリアトナーを採用しています。

以下手前みそですが、本の内容です(二次創作です)


タイトル

プランクトンプラネタリウム

あらすじ

ある日突然クラゲが見えるようになった黒子。ふわふわゆらゆらついてくるそれを、黄瀬も見ることが出来ると言う。「君の所為で見えるのかも」「毒があるんですよ」「君への恋心がクラゲになったのかも」

それを切っ掛けに付き合うことになった二人の話。

※ファンタジーと見せかけてそんなこともなく、高校卒業から大学卒業、就職にかけての二人の未来の話です。

支部再録済み



素材を駆使して表紙を作ろう!

使用ソフトはPhotoshop Elements11(当時)

書く前からタイトルとストーリーラインとおおよそのP数が決まっているタイプの字書きなので、要素を抜きだして表紙をイメージして素材を探していきます。

この話の場合「日常の中で見えるくらげの幻覚」「水族館デート」「桜」が出てくるので、日常を水没させてその上でクリアトナーで魚が浮かび上がるといいなと思って素材を探しに行きました。

画として使った素材はふたつ。

・桜の素材

・水彩っぽい水中イメージの素材

この時は両方、支部のフリー素材を利用させてもらっています。

ふたつの素材をレイヤー効果で組み合わせて、色調補正でいじったらいい感じになります。

レイヤー構造は4枚。

・色調補正用塗りつぶしレイヤー(スクリーン)

・桜(上算)

・桜(オーバーレイ)

・水中(通常)

レイヤー効果を過信しすぎているのですが、「絵の上に絵を乗せる」ではなく「絵の上に絵を重ねる」という背景作成イメージで素材を重ねていくと、思わぬ効果が出て楽しいです。


水彩テクスチャとか鉱物系テクスチャとかをフリー素材写真にレイヤーで重ねて、レイヤー効果を全部試してみてください。えっこんな効果になるのか~おもしろ~ってなります。

フリー素材もそのまま使うのでなく、色調補正とかで色味をガンガン変えて、イイ感じを探るのは楽しい作業です。


イラストフォントを利用してクリアトナーデータを作る

背景画像がいい感じに出来たので、そこにタイトルを入れて枠つけたりいい感じに調整して基本の表紙が出来ました。

次はクリアトナー用のデータを用意します。箔押しなどと同じK100%(真っ黒)で単独レイヤーを作成します。

魚のシルエットを散らしたかったので、今回はイラストフォントを利用しました。


サカナノユウレイ


イラスト系のフォントは便利です。

いちいち素材を探してこなくても文字を打つ感覚で使えるし、フォントなのでWord等で利用することも簡単です。同じ系統の色んなイラストがワンパックに入ってるので、コンセプト素材としても使いやすい。

データの作り方はこのとおり。

適当に大きめの文字で魚を打ち込み→フォントをラスタライズで画像化→拡大縮小・回転などで調整して配置

という流れでデータを作成しました。

クリアトナーで隠された幻覚がこちらです。


この黒いデータが光の加減で浮き上がる幻覚になります。印刷するとこうなります。


視点を変えると登場人物の視界になる仕様でした。

作ってても楽しかったし、お気に入りの本です。


クリアトナーの注意事項

当時の印刷会社とのメールが残っていたので一部注意事項抜粋しておきます。


・クリアトナーは全面にデザインされるほうが見えやすくなります。

(クリアトナー部分とクリアトナーが載らない部分の比率が1:1~2:1程度がオススメ)

この表紙の場合はポイントデザインでコンセプトのこともあり、見えにくくて良かったのですが、見えやすくするなら反転の抜きデザインを推薦され、本当にこれでいいのか確認頂きました。


・クリアトナーをキレイに表現するためにはCMYK合計値が150%以下が良い

(RGBで作成の場合も表紙データの背景にあたる部分が暗めの色の場合、クリアトナーが載りづらくなる)

CMYKなんのこっちゃの人なのですが、つまり暗い色はあんまり良くないよ!ってことのようです。

この表紙は多分アウトの部類の色味です。でも見えにくくていいというコンセプトなのでそのまま刷ってもらいました。

ただ、ネットで他の方の本の仕様見ると黒に全面模様として刷るととても素敵なので、自由な発想で利用するといいんじゃないかな!

ご参考までに。


最後に

この本は今はなき印刷所の「 眼鏡印de印刷所」で刷って頂きました。

丁寧に対応頂いて、クリアトナー印刷の見本刷りまでして頂き、本当にこれでいい?大丈夫?と確認して頂けて安心して刷ってもらうことが出来たことが記憶に残っています。

憧れのメガネダンボールで納品してもらえて嬉しかったです。

※もちろん本文中の人物にもメガネキャラじゃないのにメガネかけてもらいました。

(確かメガネ割りがあった)

諸々コンセプト合わせるのが楽しいタイプのオタクですが、本作りってやっぱり楽しいな!という気持ちを思い出しつつ、終わります。

コメント

    まだありません。

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