視覚、触覚、嗅覚で楽しむインスタレーションとしての装丁/エンボス加工+つや消し銀箔 等
○赤シート: 視覚
今回は一部赤インクを使いたかったので、本文フルカラーで印刷しました。というのも「赤シートを当てると赤インクの司書の台詞が消え、彼女の存在が幻覚・幻聴であったことがわかる」という仕掛けをしたかったためで、いろんな方から驚いていただけました。
先日呟いていた「百均で買い占めてレジで奇特の目をされた小道具」はこれでした。
美術館や博物館に行くのが趣味なんですが、五感を全部使って美しいものを見ることが喜びであり刺激であり、それらからたくさんの影響を受けています。道楽の同人誌でどこまで世界を拡張し、インスタレーションに近付けられるのか試してみたいとずっと考えており、今回の本は盛り込むのにこれ以上ないテーマでした。
あなたが赤シートを使って「『本当の』世界」を見るとき、ただページをめくる以外に手を動かして能動的に「見る」という行為をしてもらうことで、読者ではなく目撃者として世界に入ってもらう体験ができたらと思っていました。
少女⭐︎歌劇レヴュースタァライトというアニメをずっと引きずっているので「日常に当たり前にあって見かけるものを印象深いモチーフ・アイテムにすることで、生活の中に根付かせる」みたいな演出に憧れているのかもしれないなと振り返って思います。赤シートが身近な方もそうでない方も、生活の中でふと見かけたときに拙作を思い出していただけたらと勝手ながら思っています。
○遊び紙: 視覚
最初は赤、最後は白のトレーシングペーパーの遊び紙を使用しました。真っ赤な視界から白い存在への変化、救済の暗示を表しています。
○点字: 触覚
今回頑なにタイトルを出さず、新刊を番号表記していたのは点字の「あいして」というタイトルを書けなかったがゆえの代替案です。実物が届いた! というツイートの写真も不自然なアングルだったかと思いますが、タイトルの点字を写さないようにしていたものでした。遊び紙の次のタイトルページも柱も「 」でしたが、奥付にだけは…… という余談があります。
前回の「乱反射」で憧れの箔押しをして満足していたはずが、STARBOOKSさんのエンボス加工のページにエンボスと金箔の二度押しが載っているのを見つけて「こんなこともできるの……!? なら……!」と思い立ち実行してしまった次第です。エンボス加工で点字をつくり、つや消し銀箔で表紙の雰囲気を壊さないような上品さでタイトルとしての存在感を表せたのではないかと思います。
点字も実際の点字と同じ間隔、ドットサイズで配置していただき、小ぶりながらしっかりと綺麗に印刷してもらえて良かったです。
点字のアイデアの意図も上記の赤シートと同じく、五感を使った仕掛けでした。どうやって点字のタイトルを思いついたんですか? と聞かれたことがありますが、「視線の断絶」を表現するにあたって実際に目を瞑って、どうしたら相手を近くに感じられるか、自分の存在を伝えられるかと考えたとき、手探りで「触ること」が最初に思い浮かんだのがきっかけだったように思います。
点字にすることもあり、本のタイトルには苦心しました。ひらがなでできるだけ簡潔に、そしてわかったときにゾクッとするような直球さで、ということで「あいして」になりました。
○カバー表紙・表紙: 視覚、触覚
カバー表紙を外すと…… というあの仕掛けに憧れていたので、差分のような形で表紙をつくっていただきました。カバーを触り、外し、そこにあるものをあなたの視界に捉えて「もうここにいないもの」の面影を感じてほしかったという意図です。
○薔薇の香り: 嗅覚
お手元の本にどの程度香りが残っているのかわかりませんが、ふんわりと薔薇の香水をつけています。
昔神戸のオランダ館でつくイメージ香水をせっかくなので纏わせてみました。
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