本文演出に極振りした薄い本

投稿:くす  
ブックマーク 6

装丁の仕様が内容とリンクするので、完全にネタバレする記事です。完売はしてないけど発行から一年経ったしもういいじゃろということで。

 本文色変え擬似小口染めましかく本を作りたいという気持ちの具現化。完全に装丁先行で考えた小説本っぽくない小説本です。


利用プラン

OneBooksオンデマンド

 少部数オンデマンド前提になると、本文インク替え+変形裁断を予算内でできるところがない……となった時に思い当たったのが、カラー本文追加料金なしのワンブックスでした。発注の扱いとしてはフルカラーですが、全体を一色でデザインすることにより、擬似的なインク替えの効果を狙っています。

 薄くて柔らかい本文用紙の品ぞろえで有名なRED TRAINさんですが、今回はページ数が少ない上にA5変形裁断で大きい本なので、少し厚手の紙を選んでいます。また、本文色を濃紫にしたので、発色のいい白い紙を。イメージとしてはアルバムCDの歌詞カードですね。


組版設定

作業環境:Adobe InDesign

 サイズ:A5変形(幅148mm×高さ148mm、裁ち落とし四方3mm)

 余白(グリッド開始位置):天15mm/地19mm/小口15mm/ノド14.5mm(天/小口指定)

 染め用べた塗幅:天7mm/地12mm/小口5mm+塗り足し各3mm

 本文フォント:凸版文久明朝R 12Q(フォント色・濃紫)

 段組み:1段 字数/行数:38字23行

 字間:0H 字送り:12H

 行間:9.75H 行送り:21.75H

本文20ページ

 変形裁断なのと擬似小口染め用の枠があるので、余白の調整に頭を使いました。ページ数が少ないので、行数を稼ぐためにもノドは結構せまく取っています。


デザイン

表紙

 提出データは画像2枚目参照。PDFで提出したものを投稿用にJPEGに落としています。

 とにかくシンプルに。もともとシンプルなデザインを作りがちですが、この本は特に表紙の情報量を削ぎ落しました。

 表紙タイトルはもとの明朝体がかなり細いのを白抜きにしているので、つぶれないようにもろもろ処理を入れました。全然問題なかった。マットコート紙の印刷適正を思い知らされました。

 徹頭徹尾シリアスな内容に合わせて、縦書き文字は上揃え、横書き文字は中央揃えにして固い印象にしています。他をシンプルにした分、背表紙に当たる部分はやや装飾性を出しました。背表紙自体は1mmくらいしかないので、文字を収める気はさらさらなくむしろはみ出していこうぜという塩梅。普段は文字を見切らせる演出はあまりしないので新鮮でした。

口絵(風)

 ワンブックスには巻頭口絵オプションがあるんですが、断裁加工料金を捻出するためオプションにはせず、デザインで何とか。本文に入れている疑似小口染め用の枠を巻頭ページには入れず、表にイラスト、裏に標題紙裏っぽい記述で何となく口絵っぽさを出しています。説明はわやわやだけど意図した効果は大体得られていると思う。たぶんこのページだけ他の色を使うとかした方がもっと口絵っぽさは出ます。

疑似小口染め

 うっすら予想はしていましたが、紙が厚くてページ数が少ないのでまっすぐ持ってると小口染め感はほぼないです。

たわませるとめっちゃ紫

 なんですが、擬似小口染め用の枠部分を版面デザインに織り込んだので結果オーライ。デッドスペースになってしまうのもったいないなと思って、ノンブルと柱を白抜きにして枠の中に入れました。位置は個人の趣味でノンブル小口寄せ・柱中央。

サンプルの綴りが間違っている


本文演出

 全体は3話構成です。それぞれに本文とタイトルページ。本文演出を入れるにあたってページ調整が必要だったので、個人誌のくせに台割表を作っていました。1話目は書下ろし。2話目はWeb公開分からほぼそのまま再録ですが、3話目はページ数に合うように魔改造レベルで加筆修正してます。

 1話目は冒頭にタイトルを入れずに本文が始まるので、柱も読めそうで読めない形にしています。ページをめくると、この本で唯一濃紫以外の色を使っているページが目に入ります。登場人物の死亡シーンです。そこから1ページめくってようやくタイトルページになります。死亡ページとタイトルページは見開きにするかめくりにするか最後まで悩みました。

読めそうで読めないちょっと読める柱タイトルと血しぶき


 2話目はだいたい普通の本文ですが、視点人物の人格が変化する部分で、枠が侵食して本文色が反転します。グラデーションと白文字を重ねた部分はどのあたりから可読性が損なわれるかわからなくてちょっと日和ってしまったので、次があるならもう少しギリギリを攻めたいですね。


 3話目は普通です。力尽きたともいう。


 昔は小説をビジュアルで遊ぶことに難を示されることが多かったんですが、最近、というか二次創作の同人誌は表現上では何をしても文句言われないのが自由で楽しいなあと思います。

コメント

    まだありません。

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