Not Every Cloud Brings Rain
総合病院でがんの治療中だった高齢の男性がおりました。病状進行により死期が近いと判断され、近くの病院へ紹介となりましたが、ご本人は認知症の奥さん(おばあちゃん)のことが大変気がかりで、自宅での生活を強く希望されたことから、訪問診療をお願いすることとなりました。
ご自宅ではおばあちゃんと、息子夫婦、賢い犬と同居されており、主な介護者はお嫁さんといった状況でした。肺にお水が溜まっているような状態でしたが、酸素吸入が開始され、何週間かは穏やかな在宅生活が送れていました。
そんなある日、おばあちゃんが自宅で転倒し、足の骨を折ってしまい、緊急入院になってしまいました。手術はうまくいったのですが、入院により認知症が進行して、お嫁さんは病院でおばあちゃんの対応も行う必要が生じました。
時を同じくして、おじいちゃんも病状の進行により、ご自身で食事を摂ることが難しくなってきてしまいました。更に悪いことにお腹の痛みも訴えるようになり、訪問看護師さんの訪問や、臨時の往診が多くなりました。
お嫁さんの介護ストレスが増え、疲弊の色が濃くなってきたタイミングで、主治医の先生から、痛みの対策を兼ねて、おばあちゃんが入院している病院に、おじいちゃんも入院することが勧められました。
おばあちゃんが家に戻ってくることを楽しみにしていたおじいちゃんでしたが、やむなく入院することになりました。入院後に痛みはお薬で調整できましたが、おじいちゃんの衰弱が急に進んで、残念ながらご自宅へ戻すことは難しくなってしまいました。
結局おじいちゃんはそのまま病院でお亡くなりになったのですが、たまたまおばあちゃんが退院する前のタイミングであったことで、最後におばあちゃんと面会することができたのでした。
「死に場所なんかどこでもいいよ、お前がそばにいてくれれば」
そう言ったかどうかは定かではありませんが、雲は必ず雨を降らすわけではないんですね。

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