4/14 熱田敬子さん「”健気な被害者”を見たいのは誰ー映画『二十二』は中国の日本軍戦時性暴力の何を描かなかったか」(連続講座『映画が映す東アジア〜ジェンダー、セクシュアリティ、社会』第4回)
2017年に中国で劇場公開された『二十二』(監督・郭柯)は、撮影当時存命中の、中国に居住し、名乗り出た日本軍性暴力被害者22人を取材したドキュメンタリー映画である。歴史的な背景を語らず、被害者の日常にフォーカスしたこの映画は、中国政府の「愛国」主義と一線を隔すと受けとめられ、大ヒットとなった。そこにあるのは、監督の言葉を借りれば、「歴史の証人」ではない、「素朴」で「普通」の老人としての被害者の姿だった。
しかし、旧日本軍の戦時性暴力を訴えてきた被害者たちは、実際には激しい「怒り」を持ち、日本政府の責任追及の先頭に立ってきた。映画『二十二』は被害者の怒りを削ぎ落し、中国内外の観客が求める被害者像を見せたのである。
『二十二』のヒットが問いかけるのは、被害国でも長らく排除、差別の対象となって来た戦時性暴力被害の訴えを、一面的な理解で「愛国」と同一視する「リベラル」な観客の問題であり、かわいそうで健気な被害者を観たい観客の保護主義的欲望である。このような点から見れば、中国社会と日本社会は驚くほど共通性がある。
本講座では、中国の社会背景、日本軍戦時性暴力被害者の運動について解説しつつ、被害者を弱者として描くことの問題性について考えたい。
チケット https://eastasianmovie.peatix.com/
¥1,800/1回券(一般)
¥1,500/1回券(学生)
¥8,600/5回通し券(一般)
¥7,200/5回通し券(学生)
日程 4月14(日)18:00-20:00(ハイブリッド開催)
講座概要 「映画が映す東アジア~ジェンダー、セクシュアリティ、社会」
映画はいつも、社会の「本音」を映してきた。
ヒットする映画には作り手の意図と同時に、観客の求める欲望が映し出されている。
本講座では、韓国のアカデミー賞作品・『パラサイト 半地下の家族』、実はヨーロッパなど海外に多く輸出されている朝鮮(DPRK)のアニメーション、近年注目を集める台湾のLGBTQ映画とホラー映画、中国でドキュメンタリー映画の興行記録を塗り替えた『二十二』、香港でロングラン上映となった、実際に起きた介護施設の性暴力事件をとりあげた『白日の下』(予定)など旬の映画をとりあげ、そこに映し出された現在の社会を解説する。
映画を見たことがある人はより理解が深まり、見たことがない人はこれから映画を見るために役立つ講座である。
※終了した講座は後から配信よりご視聴いただけます。
プロフィール 熱田敬子さん
ふぇみ・ゼミ&カフェ運営委員、ジェンダー、社会学研究、北京語翻訳通訳。研究テーマは人工妊娠中絶の体験談の聞き取り、日本軍戦時性暴力被害者の名誉回復運動、東アジアのフェミニズム運動、質的調査法など。共著に『ハッシュタグだけじゃ始まらない:東アジアのフェミニズム・ムーブメント』(編著者:熱田敬子、金美珍、永山聡子、張瑋容、曹曉彤、大月書店、2022)他。
<お問い合わせ>
ふぇみ・ゼミ事務所:〒115-0044 北区赤羽南2丁目4-7 鷹匠ハイツ403号室
メール:femizemi2017@gmail.com
HPアドレス https://femizemi.org/
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